悪役令嬢が死んだ後

ぐう

文字の大きさ
上 下
39 / 65

閑話 第一王子フェリクス 

しおりを挟む



 私は第一王子フェリクス

 父は現国王陛下 母は第二側妃


 国王陛下の正妃である王妃陛下は離宮に籠られて公務も閨も拒否されている。
 また最初に妃に上がった第一側妃も第二王子と王宮の一角に居室を定めて第二王子の養育が忙しいと言い立てて、そこから出てこようとしない。国王陛下も閨に呼ぶこともなく公務も振り当てていない。

 自然、第二側妃の母が全て公務をこなし、常に国王陛下の隣は母だった。居室も寝室もずっと国王陛下の隣で子供の目からも仲睦まじく、私達子供を愛しんでくれている。だから私は母が父の正妃だと思い、私達三人だけが父の子供だと思っていた。

 私は家庭教師がつく様になって、王宮の事を学んでから、初めて父に母以外の妃がいて母は正妃でない事を知った。そして父には私達以外にも子供がいることも。

 子供心にもショックではあったが、国が続いていくためには複数の子供が必要と言う講義を受けて納得する振りをした。

 国王の子として子供でも厳しい講義と体術剣術の鍛錬が課せられて必死に付いて行っていると母に呼ばれた。
 母には家庭教師から優秀で申し分が無いと報告が上がっているが、ある事情のために『なにをやらせても平凡以下の王子』と言う評価が流れるが腐らずに勉学も鍛錬も続けて欲しいと言われた。
 最初は反発を覚え、母に初めて言い返した。どんなに言ってもただ悲しそうな母を見ると受け入れるしかなかった。それでも二、三日は意欲が湧かずにさぼっていたところ父に呼ばれた。

 そこで聞かされた事は政治的過ぎて、子供に聞かせていいことでは無いと聞かされた自分ですら思ったが、なぜ自分が目立っていけないか納得できた。それからは周りを見回して判断する癖がついた。
 『何をやらせても平凡以下の王子』にあえて近づいて来る人間の魂胆も探る癖も付いてしまったが、評判などでなく私自身を見てくれて側近候補になってくれたジョエル、アラン、エリックとの友情はかけがえがなかった。


 そうして息を潜める様にして、それでも自分の出来ることをひたすら追い求めていた。
 周りは優秀で剣にも秀でている第二王子をもてはやしていた。王太子は間違いなく第二王子になるだろうと噂されていた。


 そんな日々が続くある日、王宮の王族の私的スペースの庭園で泣いている女の子を見つけた。どうしたのと聞くと高位貴族子女を集めた第一側妃の催しに来て、道がわからなくなってしまったと。その女の子は金の髪に紫水晶の瞳でたいそう可愛らしかった。
 涙をハンカチで拭いてやり、泣き止むまで色々と話してその女の子がクリスティーヌという名前である事を教えてもらった。
 髪飾りを落としてしまったと言うので庭で咲いていた花を手折り髪に付けてあげた。
 「ありがとう」と微笑んでお礼を言うその姿に思わず見惚れてしまった。

 それでも探してるといけないので会場まで連れて行き、私は第一側妃の催しに入っていけないのでそっと肩を押した。すぐ侍女が見つけて彼女に近づいてきたのでそっと隠れた。侍女がデングラー公爵令嬢と呼んでいるのを聞いて自分が近づかない方がいい家の令嬢だと知った。

 それから数年経ち第二王子がデングラー公爵令嬢と婚約したと漏れ聞いた。
 そして第二王子が婚約者との顔合わせをすっぽかし、その後も彼女を蔑ろにしている噂を聞いた。自分の後ろ盾になる家の令嬢に何をしているのだろうとイラッとした。なぜイラッとしたのかその時はわかっていなかった。

 父に呼ばれた後王宮への来客用の庭園の四阿にポツンと座っている女性を見つけた。そばには護衛と侍女がいたので危なくは無いだろうが一人で何をしているのだろうと少し近づくと成長したクリスティーヌだった。より一層美しくなった彼女を我知らず見つめ続けた。

しおりを挟む
感想 471

あなたにおすすめの小説

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい

麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。 しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。 しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。 第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。

愛されない王妃は、お飾りでいたい

夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。  クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。  そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。 「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」  クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!? 「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

処理中です...