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しおりを挟むそれを聞いたエリックは驚愕のあまり二の句が継げなかった。それを見たフェリクスは唇に指を一本当てた。
「秘密だ」
その姿を見てエリックは今度は笑い出しそうになった。
「このことは……」
「公然の秘密だ」
「でも国王陛下はなぜ自分の子でないことがわかっているのに、王太子にと周りが言うのを許してるのですか」
「国王は王太子については一切言明していない。周りに『年齢からいっても決められるべきです』と進言されても一切明らかにしない。そして第一側妃を責めるような事を一切言わない。なぜかわかるか?」
「わかりませんよ。そんなのは」
「第一側妃の相手が王弟ユリアン殿下だからだ」
エリックは思わず叫びそうになって口を自分の手のひらで塞いだ。
「ユリアン殿下はかなり前に亡くなっていますよね」
「病弱だったからね。爵位を叙爵されても領地経営など無理だからそのまま王宮にいたんだ。第一側妃とは同い年で学園でも一緒だった。多分だけど第一側妃の事を好きだったんだろう。でも第一側妃の目は兄にしか向いてなかった。自分は病弱で叙爵も難しい。だから諦めた。でも目の前で好きな人が兄に蔑ろにされてる。それで男女の仲になったんだろうね。第二王子ができてしまった。ユリアン殿下は正直に話して兄に離縁してもらって自分が娶るつもりだったらしい。なのに病魔はあっという間に時間を奪って行った」
「なぜ、わかったのですか」
「ユリアン殿下から陛下に当てて遺書があったんだ。第一側妃の腹の子は自分の子だけれど、自分は幸せにできないのでせめて国王の子として育ててやって欲しいと」
「それを陛下は受け入れたのですか」
「そう。病弱で公務も出来なかったけれど真面目で優しい弟を愛しておられたから、最後の願いを叶えた。ユリアン殿下の代わりに将来叙爵させて王家を支える王弟にしようとしたのだが……」
「第一側妃は王太子に相応しいのは第二王子だと噂を流させてましたね。優秀で剣技も素晴らしいと」
「そう、ユリアン殿下の遺言を盾に第二王子を王太子にすると言う欲が出たんだろうな。ユリアン殿下には王位継承権があった。その子なんだからと。でも陛下だって弟の子でも自分の子ではない第二王子を王太子に付けるつもりはない。だから第一側妃がなんと言おうがうんと言わない。状況を変えるために第一側妃は自分を側妃に押し込んでくれたデングラー公爵を脅迫したんじゃないかな。当時の証拠は綺麗に消えてるけれど当人の第一側妃は生きてるから国王に話すとかなんとか」
「それで第二王子とデングラー公爵令嬢は婚約した」
「いまや勢いが弱まってるからデングラー公爵に取っては迷惑だったと思う。でも第一側妃の要求を飲んで後ろ盾になっておいて、過去の失策の第一側妃と予想外に生まれた第二王子を片付けるつもりだったはずだ。第二王子が公爵令嬢に冷たいのを見てこれはいけると思ったはずだよ」
「第二王子は後ろ盾になるデングラー公爵令嬢を蔑ろにしたら困るだろうになぜそんな事をしたんですかね……」
エリックがそこまで言った時、ガラリと音を立てて飛び込んできた者がいた。
「殿下!ジョエルが飛び込んできました」
アランだった。そのアランを押しのけて現れたのはジョエル・シュテーデルだった。
「どうした。ジョエル」
「フェリクス殿下 陛下が王妃の離宮捜索をお認めになりました」
「証拠が出たのか」
「王妃の離宮を見張っていたのですが、何か慌ただしく、踏み込もうとしたところ周りの母国から付いてきた侍女達が頑として拒否するのです。国王陛下の命令書を示して近衛第二が踏み込みました。王妃が人事不省に陥っていたところを発見しましたので、離宮内の証拠品を押収いたしました!」
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