34 / 65
29
しおりを挟む「少し休憩するか。残りの尋問は犯人の男爵令嬢だけだし」
フェリクスがそう言って座るとアランは書き上げた手紙を二通、外にいる近衛騎士に渡しに出て行った。教室の中はフェリクスとエリックのみ。エリックは近くに座って言葉を発した。
「殿下、私は聞いていただけなので理解し難いこともいくつかありました。質問していいですか」
「構わない。言ってみろ」
フェリクスはふっとため息を付いた。
「まず、殿下は視察の日を今日に決められました。普段なら殿下は視察の日程は先方や近衛の都合に合わせても良いと言って下さいます。が今回はこの日と決められました。しかも三日前に急に。私の知る殿下はそのような事をしない方です。そして来てみればこんな事件が起きた。偶然じゃないですよね」
エリックのぐいぐい来る話にフェリクスは苦笑いをした。
「おや、やけにいいように取ってくれてたな」
「殿下、答えて下さい」
「もちろん偶然じゃない。今日来て欲しいと指示してきた人間がいる」
「それは誰ですか」
「悪いがまだあかせない」
エリックは少し考えたようだが質問を変えることにした。
「では、殿下、殿下はなぜこの事件を解決しようとされているのですか」
「後始末を頼まれた事もあるが、この事件の根幹は王家の問題でもある。エリック、なぜ王太子が決まってないと思う?」
「それは我々のような者にはわかりません」
「本来なら王妃所生の王子が正統な後継だ。嫁いで三年子が出来なければ、側妃を娶る。また出来なければまた娶ると言うのが我が国の王家の決まりだ。側妃を娶りたくないと言って退位した王も過去にいた。そんな王もいたがそれは特別な例だ。今の国王になってひとりの女性の横恋慕で無茶苦茶になった」
「第一側妃の事ですか?」
「そうだ。またそれをごり押しをしたのがデングラー公爵を旗頭とする反王家派だ」
「先程言ってらした王妃との不仲狙いですか?」
「そうだ。嫁いで来る前からいる側妃は愛してないなどと言う国王の言葉を信じなかった王妃も頑なだと思うが嫁いできた時は王妃は16才だった。批判するのは酷いかもしれない。そして国王と王妃は不仲になり王妃のたっての願いで離宮に別居し3年経っても子が出来ないからーー当たり前だがーーー私の母を側妃にあげた。当時デングラー公爵から抗議が入ったけれども、公爵は代替わりをしたばかりで勢力は弱まっていたし、第一側妃は5年間王宮に上がってから一度も身篭ってないので却下された」
「私の覚えでは殿下はすぐ生まれていますね」
「そう私の母は私を産んで妹達も続けて産んでいる。第一側妃とデングラー公爵家の焦りは察して余りある」
「ちょっと待って下さい。反王家派はなにがしたかったのですか?」
フェリクスは椅子の背に背中をもたてかけさせてふぅーと息を吐いた。
「先代公爵としては嫁いでくる王妃と国王を不仲にして隣国との折衝がさらに悪くなれば、自分の出番が来ると思っていた。何しろデングラー公爵の母は先代国王の姉王女なんだ」
「では従兄弟……」
「そうだ」
「でも反王家派に王女が嫁いだのは何故ですか」
「懐柔ーー出来なかったけれどーー先代デングラー公爵は相当の切れものだったから王女を娶るように王命がおりて娶っても決して尻尾を出さなかった。だが二つの誤算があった」
「なんでしょうか」
「自分の寿命と王妹の活躍だ。第一側妃を押し込み王妃を遠ざけても、伯母の王女と違って聡明な王妹が隣国との不和を解消してしまった。しかも鉱山による産業が隆盛となり国力が上がった。そんな時に自分がぽっくりと急死してしまった。残ったのは恋愛脳の後継だけだ」
「では今は反王家派は勢いをなくしているのですね」
「そう、デングラー公爵としてはやり過ぎの第一側妃と第二王子を消そうとしていた。第二王子が自分の娘と公の場で婚約破棄でもしてくれたら第二王子を速やかに王家から追い出せるから」
「だからあえて学園内で娘が虐げられてても口を出さなかった」
「そうだ。流石に殺されるとまでは思ってなかっただろうが、娘を駒にしか見てなかったのだろうな」
「でもなぜ消す必要があったのですか?」
「それは第二王子は国王の子ではないからだ」
103
お気に入りに追加
6,194
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる