14 / 65
11
しおりを挟む「興奮されていますね」
アルベルトが護衛を突き飛ばして出て行くのを見ながらアランがフェリクスに向かって言った。
「……子供の頃から交流がほぼ無かったので、彼がどんな人柄かよくわからないのだけれど王宮で彼は評判はよかった」
「ですがデングラー公爵令嬢と婚約してからの評判はよくないですね」
フェリクスがアランを見た。
「よく知ってるな」
「私の従兄がアルベルト殿下の侍従だったのですが、あまりに婚約者の扱いが酷くて苦言を呈して罷免されましてね。同じように批判するものは全て辞めさせられてます」
「そうか、アランの従兄と言うとボンズ伯爵の……」
「はい 次男です。アルベルト殿下の勘気を蒙ったので今は隣国におります。王妹殿下があちらの王妃になられてから交流が盛んですのであちらで文官になると思います」
「婚約者の扱いがひどいというと?」
「顔合わせのお茶会には行かれず、その後も舞踏会でのエスコートは形だけファーストダンスも無視をして他の令嬢とこれ見よがしに踊っていたようです」
「だがあの婚約は王命だったはず」
「第一側妃様はご実家が後ろ盾になってくれないのでデングラー公爵家を後ろ盾にと必死です。そのためアルベルト殿下を叱責していたと従兄が言っていました。第一側妃様が既に国王陛下の閨に侍っていない状態なのでこれ以上国王陛下のご関心を得ることは難しいので、折角結んだ婚約を無碍にしていると思われると不味いと焦っておられると思います」
それを聞いてフェリクスがぽつりと漏らした。
「今更だが我が母は相当恨まれているだろうな」
「それはもう。第一側妃様は無理矢理後宮入りをされましたので、陛下のお渡りは当初よりほぼ無く、王妃様も不仲のため離宮におこもりで、王宮で睦まじく暮らしていらっしゃるのは第二側妃という名前の実質上妻のフェリクス殿下のお母上ですから」
アランがあまりにきっぱり断言するのでフェリクスは苦笑いをした。
「ーー先程のデングラー公爵の元婚約者の話だが、恨むべきはデングラー公爵なのに死を望むのはその妻、不幸を望むのはその娘なのだな」
「できるなら取り戻したいーーという気持ちでしょうか」
「婚約者すらいない我らに女心はわからないな!」
「フェリクス殿下と一緒にされるのはちょっとーー」
お互い顔を見合わせて笑った。フェリクスはふと思い出す。
「私は夜会や舞踏会などあまり行かないが、アルベルトがデングラー公爵令嬢を放置して他の令嬢と踊っているところを見たことがある。蔑ろにしているという噂は聞いていたが、放置しているアルベルトの目がずっとデングラー公爵令嬢を追っていた。どう言う心理なのかと思った覚えがあるな」
「それもどう言う心理なのでしょうかね」
二人は黙り込んでしまった。
「失礼します」
出入口の護衛が入ってきた。
「ヘルマン近衛第一騎士団長がいらっしゃいました」
「そうか 子息と一緒に話をしよう。子息が拘束されている教室に案内してくれ。私達もすぐ向かう」
フェリクスとアランは近衛の護衛を引き連れてヨーゼフ・ヘルマンが拘束されている教室に向かった。
丁度入り口でヘルマン近衛第一騎士団長に出会った。ヘルマン近衛第一騎士団長は貴族でもあるが、ずっと騎士の最前線に出ているので、鍛え上げた身体をしていた。フェリクスを見るなり深々と礼をした。
「フェリクス殿下 この度は愚息が誠に申し訳ありません」
「最近様子がおかしいと思うことは無かったのか?」
「ーーーーございます。幼馴染で幼い頃から仲の良かった婚約者に婚約を解消されました。ヨーゼフの不義が原因でございます。情けないことに学園でマリアという男爵令嬢に夢中になり、婚約者を蔑ろにしておりました。婚約者の方が爵位が上ですので、あちらから荒立てずに解消してほしいと言われてしまえば応じる以外できませんーーー」
「ヨーゼフはそれでよかったのか」
「マリアという男爵令嬢を娶りたいと言い出しまして、調べたら学園でとんでもないことをしている令嬢なので反対したのですがーーー」
「聞き入れなかったと」
「左様でございます。このままでは廃嫡というところまで来ていまして、こんな騒ぎを起こしたのならもう決まりです」
「ヨーゼフの話も聞こうか」
そう言うフェリクスに従って教室に入っていった。
132
お気に入りに追加
6,196
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!

第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい
麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。
しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。
しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。
第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。

私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります
せいめ
恋愛
『小説年間アクセスランキング2023』で10位をいただきました。
読んでくださった方々に心から感謝しております。ありがとうございました。
「私は君を愛することはないだろう。
しかし、この結婚は王命だ。不本意だが、君とは白い結婚にはできない。貴族の義務として今宵は君を抱く。
これを終えたら君は領地で好きに生活すればいい」
結婚初夜、旦那様は私に冷たく言い放つ。
この人は何を言っているのかしら?
そんなことは言われなくても分かっている。
私は誰かを愛することも、愛されることも許されないのだから。
私も貴方を愛さない……
侯爵令嬢だった私は、ある日、記憶喪失になっていた。
そんな私に冷たい家族。その中で唯一優しくしてくれる義理の妹。
記憶喪失の自分に何があったのかよく分からないまま私は王命で婚約者を決められ、強引に結婚させられることになってしまった。
この結婚に何の希望も持ってはいけないことは知っている。
それに、婚約期間から冷たかった旦那様に私は何の期待もしていない。
そんな私は初夜を迎えることになる。
その初夜の後、私の運命が大きく動き出すことも知らずに……
よくある記憶喪失の話です。
誤字脱字、申し訳ありません。
ご都合主義です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる