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しおりを挟むフェリクスが護衛を率いて尋問に使って良いと言われた空き教室に入った。フェリクスは教室の真ん中の机の椅子に座り護衛達はアランのみフェリクスの側に残り、前と後ろの出入り口に分かれて立った。アランは護衛が持ち場に付いたのを確認して、自分は筆記用具を出してフェリクスの横の机の椅子に座った。
「今回の事件には沢山の目撃者がおりますが、実際の犯行を目撃したのは一人です」
アランが手元にある報告書を読みながら報告した。
「そうか では犯行の目撃者から呼んでくれ」
出入口の護衛が扉を開けて目撃者である近衛騎士団の騎士マークを呼んだ。
「失礼します!近衛第一騎士団所属マーク・ギルデンであります!」
入り口でぱっと踵を揃えて敬礼をした。
「ご苦労 本日見聞きしたことの真実を余すことなく証言出来るか?」
「はい!近衛騎士団の騎士徽章に誓います!」
マークは二人の前に少し離れて置かれた椅子に座った。
「君はどうして犯行現場を目撃したのかから話してくれ」
「私の本日の任務は王立学園を視察に行かれる第一王子殿下の護衛です。本日は近衛第一騎士団より副団長を頭にして、おそば近くの護衛として十名、学園外で警護をするものとして二十名配置されております。私は光栄にも学園内での護衛に選ばれました。殿下が視察される今度改装予定の校舎に先回りして異常がないか、不審人物がいないか調べに同僚のエルビス・モートンと参りました」
「二名一緒の場所にいたのか?」
「いいえ、私が二階 エルビスが一階を見廻りました。授業が終わった時間帯だった様ですが、二階は既に授業に使われてないので人影はありませんでした。私は奥の教室から順に誰か隠れて居ないか危険物はないか確認して、一階に降りる階段に近づきました。遠目に階段のそばで女性が二人いるのが見えました。声は切れ切れにしか聞こえませんが、争っている様でした。争っていたと言っても片方の女性のみが声を荒げておりました」
「何を言っていたか聞き取れたか」
「離れていて切れ切れですし、聞いたことのない単語でしたので、はっきりしませんが『なんであんたはいじめ……』『…あんたも転生者……』『悪役令嬢のくせに…』『逆ハーは達成……』『もう断罪……』などと聞こえました」
「転生者?悪役令嬢?逆ハー?どういう意味だ」
フェリクスは隣のアランに尋ねた。
「私にはわかりません。令嬢が悪役?とはなんでしょうか」
アランは緩やかに首を振る。
「それからどうした」
フェリクスが先を促す。
「はい。言葉で争っていただけなので静観して、歩いて近づいて行きました。そうしたら一際大きい声で『あんたに傷つけられてアルに泣きつくんだから……』と言って手に持っていたナイフで自分を斬りつけようと腕を振り上げました。罵られた女性が『あなたは第二王子殿下の大事な方なのにそんな事しては!』と叫んでナイフを取り上げようとして揉み合いになりました。それで私は『なにをしているんだ!!!』と言って駆け寄り、二人を取り押さえようとしました。が一瞬遅く取り上げようとした女性が胸を刺されて、罵っていた方がナイフを女性の胸から抜いてしまいました。その反動で背中から女性は階段を転がり落ちていきました」
「アルとは第二王子の愛称だな。身分の低い加害者が愛称呼びで婚約者の被害者は敬称のみで名前も呼べないのか」
フェリクスはポツリと呟いた。
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