17 / 50
17
しおりを挟む
「これは邸の階段に落ちていました。出てくるときに拾ったのですが、私にとってとても大事なもののような気がして持ってきてしまいました」
レオンハルトはイヤリングを持ち上げて灯りにかざした。
「これは私があなたに贈った唯一の宝石なんだ。学園の入学祝いに贈った。高いものは買えなくて小さな宝石になってしまったけど、あなたは私が選んだということで、とても喜んでくれてお返しに紋章を刺繍したハンカチを贈ると言ってくれた。でも入学して以降あなたは私に近づかなくなった。今思うとマリアと一緒にいる所をあなたに見られたからなんだろうな」
レオンハルトはイヤリングを私に渡して来た。
「こんな小さなものでも私が選んだということで喜んでくれたあなたの気持ちを踏みにじった私は何と愚かなと思う。マリアは口を開けば贈ってくれるなら、公爵家に相応しい宝石をと言っていたのに、私は目が開いていなかった」
本当に愚かな男。でも騙されたのはあなたよ。だれのせいでもない。あなたがしたこと。私はユリアとは違うから、あなたを許さない。あなたを私という檻に入れてあげる。どこかの誰かとまっさらな幸せなんて手に入れさせてあげない。
私はカップを置いて、レオンハルトの手を両手で包んだ。
「ユリア?どうした」
「覚えてないけど、私達は初夜もしてないのでしょう?それはあなたの希望?私なんかに触れたくないって」
レオンハルトは驚いたようだが、緩やかに首を横に振った。
「私の卒業後すぐ父が亡くなったから婚儀は延期になるはずだった。でも母がなんとしても早く結婚しろとうるさく侯爵に頼んだことから、あなたの卒業後身内だけで結婚式をあげたんだ」
「そう言えばあなたのお母様は今どちらにいらっしゃるの?」
「あんなに父にいろいろ言ってたのに、父が亡くなったらあっという間にだんだんと弱って、私達の結婚後ニ年で亡くなった。最後は父の名前を呼び続けてた」
「愛し合っていらっしゃったのね。羨ましいわ。私には一生手に入らない」
レオンハルトの手を離したら、レオンハルトが私の腕を引いて、抱きしめて来た。
「ユリア 愛してる。間違えてばかりの愚かな私だけど、どうか許して。愛を捧げさせて。結婚式が終わったらその足であなたは領地に行ってしまった。初夜はできなかったんだ。私は嫌われていると思って追うこともできなかった」
追いなさいよ。愛があるとか言い張るなら追いかけて抱きなさいよ。なんて情けない。
「じゃあ、私がここで抱いてと言ったらあなたはどうする?」
レオンハルトはイヤリングを持ち上げて灯りにかざした。
「これは私があなたに贈った唯一の宝石なんだ。学園の入学祝いに贈った。高いものは買えなくて小さな宝石になってしまったけど、あなたは私が選んだということで、とても喜んでくれてお返しに紋章を刺繍したハンカチを贈ると言ってくれた。でも入学して以降あなたは私に近づかなくなった。今思うとマリアと一緒にいる所をあなたに見られたからなんだろうな」
レオンハルトはイヤリングを私に渡して来た。
「こんな小さなものでも私が選んだということで喜んでくれたあなたの気持ちを踏みにじった私は何と愚かなと思う。マリアは口を開けば贈ってくれるなら、公爵家に相応しい宝石をと言っていたのに、私は目が開いていなかった」
本当に愚かな男。でも騙されたのはあなたよ。だれのせいでもない。あなたがしたこと。私はユリアとは違うから、あなたを許さない。あなたを私という檻に入れてあげる。どこかの誰かとまっさらな幸せなんて手に入れさせてあげない。
私はカップを置いて、レオンハルトの手を両手で包んだ。
「ユリア?どうした」
「覚えてないけど、私達は初夜もしてないのでしょう?それはあなたの希望?私なんかに触れたくないって」
レオンハルトは驚いたようだが、緩やかに首を横に振った。
「私の卒業後すぐ父が亡くなったから婚儀は延期になるはずだった。でも母がなんとしても早く結婚しろとうるさく侯爵に頼んだことから、あなたの卒業後身内だけで結婚式をあげたんだ」
「そう言えばあなたのお母様は今どちらにいらっしゃるの?」
「あんなに父にいろいろ言ってたのに、父が亡くなったらあっという間にだんだんと弱って、私達の結婚後ニ年で亡くなった。最後は父の名前を呼び続けてた」
「愛し合っていらっしゃったのね。羨ましいわ。私には一生手に入らない」
レオンハルトの手を離したら、レオンハルトが私の腕を引いて、抱きしめて来た。
「ユリア 愛してる。間違えてばかりの愚かな私だけど、どうか許して。愛を捧げさせて。結婚式が終わったらその足であなたは領地に行ってしまった。初夜はできなかったんだ。私は嫌われていると思って追うこともできなかった」
追いなさいよ。愛があるとか言い張るなら追いかけて抱きなさいよ。なんて情けない。
「じゃあ、私がここで抱いてと言ったらあなたはどうする?」
0
お気に入りに追加
959
あなたにおすすめの小説
王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】
霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。
辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。
王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。
8月4日
完結しました。
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
記憶がないなら私は……
しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。 *全4話
年上の夫と私
ハチ助
恋愛
【あらすじ】二ヶ月後に婚礼を控えている伯爵令嬢のブローディアは、生まれてすぐに交わされた婚約17年目にして、一度も顔合わせをした事がない10歳も年の離れた婚約者のノティスから、婚礼準備と花嫁修業を行う目的で屋敷に招かれる。しかし国外外交をメインで担っているノティスは、顔合わせ後はその日の内に隣国へ発たなたなければならず、更に婚礼までの二カ月間は帰国出来ないらしい。やっと初対面を果たした温和な雰囲気の年上な婚約者から、その事を申し訳なさそうに告げられたブローディアだが、その状況を使用人達との関係醸成に集中出来る好機として捉える。同時に17年間、故意ではなかったにしろ、婚約者である自分との面会を先送りして来たノティスをこの二カ月間の成果で、見返してやろうと計画し始めたのだが……。【全24話で完結済】
※1:この話は筆者の別作品『小さな殿下と私』の主人公セレティーナの親友ブローディアが主役のスピンオフ作品になります。
※2:作中に明らかに事後(R18)を彷彿させる展開と会話があります。苦手な方はご注意を!
(作者的にはR15ギリギリという判断です)
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】
王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。
しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。
「君は俺と結婚したんだ」
「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」
目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。
どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
魔族 vs 人間。
冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。
名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。
人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。
そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。
※※※※※※※※※※※※※
短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。
お付き合い頂けたら嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる