乙女ゲームの結末は

ぐう

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リヒャルト殿下

帰国

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 その後市井に出る機会があるたびに、あの広場に出来るだけ行ってみたが、彼女に再び会うことはなかった。

 そうして、帰国の日が来た。帰りも大公と同じ馬車だった。

 「どうだった、リヒャルト、この国は」

「休みに市井に出て、王都とその郊外を四人で見て周りました。王都を一歩出るとガラリと様相が変わってました。かなり貧しいですね。市場にも寄りましたが、農作物の種類と品数が圧倒的に少ない。
 護衛のヤンが怪我をした老女を助けて自宅に送りましたが、その時に、老女の家族から庶民が診てもらえる医療機関もなく、医師は高額な治療費を取るので庶民は薬草師頼りだと言っていたそうです。」

 大公が穏やかに笑う

「鉱山もガセだったよ。わざとこちらに情報を流していた。穴を掘ってわざわざ鉱石を運び込んでた。そこに視察に行かないかと誘われたよ。」

「見破られないと思っていたのでしょうか。」

「まあ 稚拙なやり方だね。あの国の宰相はあの国でましな方なんだが、国王を抑えきれないみたいなんだ。王妃の弟なんだけどね。王族の贅沢は限りないみたいだし、属国の申し出は国に帰ったら国王から正式に断ることになる。」

「リヒャルトの婚約者になりたいと第一王女にすがられたのにもびっくりしたよ。正式に断りの文書をミュンター国王に提出したのにだよ。」

「リヒャルト、来季から留学してくる第一王女・・・確かイザベラだったかな、には気をつけろ。」

「はい。肝に銘じます。」

 憂鬱だ。第一王女は聞いた話によると、まるで王太子妃のようではないか。地位が目当てでにじり寄られても不愉快だ。来季は彼女が入学するからと心が湧き立っていたのに、冷水をかけられたような気分だ。

「リヒャルト、随分気を張って生きているようだが、今の境遇はきみのせいじゃない。私はきみの後見をする様に、国王に言われて受けたよ。今回の旅で私はきみを気に入った。これからは何かと相談にのるからいつでも来てくれ。私にもきみと同じくらいの息子がいて、来季から学園だよ。」



馬車の窓から外を見ると、国境門を通り過ぎるところだった。

「我が国に入ったな。風景が全く違う。」

大公が窓を大きく開いた。帰国手続きに馬車を降りて行く。国境警備隊の騎士が礼を取って立っている。国境は辺境だが街並みは明るく活気がある。この豊かな国で私は何をすべきだろうか。
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