乙女ゲームの結末は

ぐう

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リヒャルト殿下

夏の長期休暇

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 夏の長期休暇に入った。王都はこの時期かなり暑くて過ごしにくい。
領地持ちで役職のない貴族達は、この時期は領地に下がる。

 国王陛下は常に執務に追われるので、ずっと王宮だ。年齢的にいうと、譲位して王太子に執務を任せて、静養に行くのが普通だろうが、譲位の話は出ない。

 王太子殿下も執務はしているようだが、決裁の権利は持たせてもらってないという。外交にも出してもらってないと聞く。外交は王弟殿下が担っている。あの時廃嫡にはならなかったが、この先の保証はないだろうと思う。

 王太子殿下の側近のマイヒェルベック公爵は有能な人物だそうだ。国王陛下が、王弟殿下の側近にならないかと打診した時、固辞したそうだ。同じ女に入れ込んだ仲間(下衆なことばで、竿兄弟と言うのだと聞いたが)で気まずくないのだろうか。



 王宮に戻ってすぐに、国王陛下に呼ばれた。前の謁見する広間や応接室でなく、王の居室のある一角だ。

「リヒャルト、学園どうであった。」

「まだ短い間ですが、報告にあげたような輩がいてびっくりしました。私に籠絡する価値があるとは思えなかったので、甘く考えてました。」

国王陛下は苦笑いして

「まあ、そんなに卑下するな。そなたからの報告にもあったが、密偵からも報告は上がって来ている。そなたへの接触だけでは、流石に処分できないが、アイスラー伯爵の娘、エラは他にもいろいろしでかしておったからな。父親を呼んで注意をした。伯爵はこの一夏領地に閉じ込めて、教育し直すと言っておった。夏の休み明けても、直っておらなかったら、一族のものに嫁がせると言っておった。」

「ですが、本人が父親も婚約を強請っていると言っておりました。父親の指示でしていたのでは、ありませんか?」

「確かに伯爵から婚約者にしてほしいと、請願が来ておった。が、リヒャルトの縁談は本人が成人してから、本人の意向で決めると、どの請願も拒否するよう事務方に勅令を出してある。私に直接強請る強者もいるが、全て勅命が出してあると拒否している。」

「そなた、エルマーとギュンターを連れて、この夏外交に出かける王弟ヴェスト大公についていくように。王子としてでなく、エルマーやギュンターと同じ貴族の子息として行くように。そなたのこれからに役に立つと思う。」



 御前を下がって自室に行くとエルマーとギュンターが来ていた。

「この夏ヴェスト大公の随伴として、エルマーもギュンターも私と一緒に選ばれたけれど聞いたか?」

「今朝ヴェスト大公からの命令書受け取りました。急でびっくりしました。殿下に詳細を教えていただこうと思って。」

「農作物の輸出入の条約締結のために隣国に向かうヴェスト大公の随伴だ。細部も詰めるから、一ヶ月は滞在すると言われた。」

「我らが役に立つんでしょうかね?」

 それよりも王家の色のない王子に経験を積ませようとしている国王陛下の気持ちがわからなかった。
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