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第三章 今世
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しおりを挟むそれから生徒会での私の扱いが変わった。それまではシャルロットのおまけのように扱われていた。ーーー私としては好都合だったのだが。ーーー
グスタフにはっきりものを言ってから、グスタフはシャルロットのついででなく、私に私の意見を求めるようになったのだ。
そしてそれはルドルフもだ。シャルロットの影として私を視界に入れてなかったのに、急に私を私としては視界に入れて、用事のある時のみだが、話しかけてくるようになった。
ルドルフに認識される事は、私としては嬉しくはないけれど、デビュタントのあと泣くだけ泣いた後すっきりしているので、確かに言えることはどうでもいいだ。
ただ、相変わらず女の趣味は悪いなと思うぐらいだ。
それよりも一年の役員のクリストフと話すようになって、この生徒会の欠点に気がついた。三人も王位継承権持ちがいて、その内二人が会長と副会長で物事を決める決裁権がある。
それなのに我が国の王族不足のせいで学生でありながら、公務が多く学院も欠席をすることが多い。
そのために生徒会の実務が滞るのだ。それぞれの担当に決裁権を持たせて欲しいと、クリストフと二人で三年のグスタフと二年のカールに相談した。昨年度の会長は休学中のユリアンで副会長はルドルフだったそうだ。なので、ユリアンが全て決裁していたので、今のような問題は起きていなかったと言うわけだ。
会長と副会長を辞めさせる事は出来ないし、公務に行くなと言うことはできない。
グスタフもカールも三年のダミアンもいい顔をしなかったが、夏季休暇に入る前の生徒会主催のダンスパーティの準備が滞っているのは、わかっているので、私にダミアン、クリストフにカールが付いて予算から手配まで済ませて、グスタフが決裁の手伝いをすることに決まった。
やっと物事がスムーズに進み、会場の装飾と飲食の材料の買入れも終わり、学院の使用人に指図が終わった。楽団の手配もクリストフ達が済ませたので、一息を付いた。
生徒会の棟の食堂で今日はクリストフと二人でランチをとっている。
「リーゼロッテ嬢、これいかがですか」
木の器に入れられた果物をクリストフの従僕が持ってきてくれた。
「我が領地は果樹園が多く、全ての季節に合わせて果物作って市場に出しているのです」
クリストフ少し誇らしげにそう言った。
勧められた果物は瑞々しくて甘い。
「美味しいですわ。水分が多いのですね。甘みが引き立ちます」
クリストフが頰を紅潮させて身を乗り出した。
「わかりますか!果物を掛け合わせて新しい物を開発しているのです」
クリストフの子爵家は義兄に聞いたには、領地の土が小麦の耕作に向かないため、クリストフの祖父の代から熱心に果物を交配させて人気のある果物を作っているとか。
子爵家ではあるけれど、市場への出荷も順調で侮れない家だと。
生徒会での仕事も貴族は金勘定を嫌がるが、彼に任せておけば予算内に望んだ以上のものが手配されていた。はっきり言ってクリストフに付いたカールは筋肉脳で言われた事はするけれど、気配りはできない。ほぼクリストフ一人でしたと言っていい。
「クリストフ様のおかげで、順調に済んでホッとしました」
あの王族三人は他国の王族が来賓としてきているとかで、今回は全く役に立たなかった。
「いえ、リーゼロッテ嬢こそ数字に強いのにびっくりしましたよ。暗算も一瞬ですしね」
お互い次々と褒め言葉を言い合い、思わず見つめ合ってしまった。その途端二人とも吹き出した。彼とはいい友達になれそうだ。
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