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第三章 今世
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しおりを挟むシャルロットには申し訳ないが、私は自分を守りたい。これ以上傷つきたくない卑怯者なのだ。
メラニーが入学後仲良くなったと言うBクラスのステラ・ホーセン伯爵令嬢とも交流を深めた。Aクラスではシャルロットの牽制で近づいて来る令嬢はいなかったので、メラニーの紹介で知り合ったのだ。
彼女も我が家と同じように王宮勤めの父兄は居らず、どこにも属さない中立で領地経営に専念する立場の家の令嬢だったため、話がよく合って付き合うのがとても楽だった。
生徒会で仕事のある時は生徒会室でランチを取り、それ以外は中庭のテラスにあるテーブルで三人でランチを取り、情報交換という名のたわいない女子トークを交わした。
今日は生徒会での仕事のために生徒会室に向かっている。と、後ろから呼び止められた。
「リーゼロッテ嬢、ちょっといいかな」
振り返るとグスタフだった。彼は王宮勤めの予定のない侯爵家の嫡男のため、三年生でも生徒会に残っていた。
「君に聞きたいのだが、生徒会室では聞けないので、立ち話で申し訳ないがいいかな」
グスタフにも私にも婚約者はいない。二人きりになるわけにもいかないが、生徒会役員にも聞かれたくないのだろう。この通路は普通に生徒が歩けるが、この先は生徒会の棟のため、一般の生徒はほとんど使用しない。ちょうどいいと思って待っていたのか?なんだか不吉な予感しかないが、身分が上の上級生の話を拒否出来ない。
「はい、どのようなお話でしょうか」
そう尋ねると、いつも穏和で生徒会で皆の不満をうまく宥める調整役のグスタフにしては珍しく、早口で言い始めた。
「君はシャルロット嬢を嫌っているのか?」
あまりな言い分に呆気に取られた。
「とんでもございません。シャルロット様にはよくしていただいて感謝しております」
「だったら何故ランチを生徒会室で取らない日が多いのか?シャルロット嬢は一人で寂しそうだ。申し訳ないと思わないのか」
なんだこれは。シャルロットはグスタフに好意を抱いてるのは知っているが、グスタフもなのか。相思相愛で結構だが、ランチは同級生ととってもいいと言ったのは会長じゃないのか。
「お言葉を返すようで恐縮でございますが、会長より同級生との交流は許可されています」
「だが!生徒会では女性は二人きり、君がいないとシャルロット嬢は一人だ」
いやそうでもない。入学前から生徒会に差し入れと言う名の訪問で二年、三年とは顔見知りだし、なんと言っても兄と従兄弟がいるじゃないか。もし反対に私が生徒会室に女性一人で取り残されても、この人はこんな事を言ってくれるのだろうか。
「グスタフ、あなたの言ってることは言いがかりだ」
自分の目の前にふっと影が差した。背の高い男性が私の前にグスタフから守るように立ち塞がっていた。
「ルドルフ!」
「私達だって一年中、生徒会室内でランチは取っていない。生徒会運営にとって、生徒会役員以外との交流は大事だ。独善的にならないように生徒の意見は大事だ」
ルドルフだった。意外だった。生徒会に入っても、この人が私に話しかけることはなかったのだ。大体が隣のシャルロットにしか話しかけない。まあ、私がそうなるように立ち回っているのだが。
「シャルロット嬢がかわいそうだ」
「あれにはジョエルも私もいる。入学前から知り合いになったあなた達だっている。反対にシャルロットが生徒会に来ないで、リーゼロッテ嬢が生徒会で一人になったら知り合って日の浅い我らしかいないのに、今と同じ事をシャルに言えるのか」
そう言われて口籠るグスタフ。
「リーゼロッテ嬢がランチを取っている同級生は幼馴染だ。親しくして当たり前じゃないのか」
あら?何故この人がメラニーの事を知っているのだろう?生徒会室で話題にした事は無い。と言うか私は基本生徒会役員とプライベートの話はしない。
シャルロットが我が家を調べたように、私のランチ相手を調べた?いや、そんなことしてこの人になんの利益があるのか。
シャルロットが心配で調べたのだろう。私には興味はないだろうと私は自分の中で納得させた。
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