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第三章 今世
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しおりを挟む公爵令息はルドルフ殿下と同じ歳。仲良さげに二人は微笑みを交わして、今度は公爵令息が拡声器の前に立った。
「今年度の生徒会副会長のジョエル・バースです」
華やかな容姿のルドルフ殿下と違って、生真面目な雰囲気の目鼻立ちは整っているけれど地味な人だった。二人は従兄弟に当たるはずだが、髪の色も目の色も違いあまり似ていなかった。
「今年度も一年生から三人、クラス分けの試験の成績順に生徒会に入会していただきます。一度、生徒会役員に任命されますと三年間自動的に役員を続けていただきます。先程貼り出されたクラス分けをご覧になったと思いますが、上位三人の方は入学式の後のガイダンスが終わりましたら、生徒会室までおいでになってください」
王族の一員で公爵令息なのに丁寧なものの言い方にびっくりした。バカ丁寧な礼儀は必要はないが、常識的な礼儀は必要だから、ガイダンスで言われる学院では、身分の差はないと言う建前を信用しない様にと、姉に散々言われているから。
それにしても困った。名門と言われる我が家の名誉を損ねない様に頑張ったせいで、どうやら生徒会に入らないといけないらしい。姉二人ともAクラスだったから私が落とすわけにはいかないと思ったが、よく考えればルドルフ殿下が生徒会にいることは予測できた筈だ。なんてバカなんだろう。
入学式に続く教師によるガイダンスの間ずっと、どうしよう、どうしようと悩んでいたが、終わる頃にはやっと心が決まった。
ルドルフ殿下は私を見ても思い出さなかった。と言うことは、この先も思い出すことはない。きっとあの方の今世では前世は必要ないのだ。今世ではあの方を苦しめた魔力の呪いもない。麗しい貴公子として、前途洋々なのだ。あの人が身分に相応しい令嬢と婚姻をして幸せになってくれれば、それでいいのだ。それが前世での私の願いだった。
私の方針は敬して遠ざける。それだけだ。
「ベネット伯爵令嬢でよろしいでしょうか」
ガイダンスが終わって、どうしようかと思っていたら、可愛らしい雰囲気の令嬢に声を掛けられた。
「私、シャルロット・バースです。先程壇上にいました副会長の妹です。生徒会に入らなくてはいけない様ですから、同行させていただいても?」
公爵令嬢だ!と慌てて立ち上がる。
「ありがとうございます。私、リーゼロッテ・ベネットでございます」
「まあ、そんなに畏まらないでくださいまし。同級生ですし、あなたは首席入学ですのよ」
いえ、身分に首席は関係ありませんから。
「でも、よかったわ。今年は三人で女性は二人。去年は兄とルドルフともうお一方も男性で男ばかり。女性一人だったらどうしようと思っていましたの。仲良くしてくださいましね」
「こちらからよろしくお願いします」
そんな心配するところを見ると、自信があったのだろうなあと思って、ふわふわした栗色の巻毛で可愛らしい見た目の公爵令嬢をじっと見た。
私はこの方が甘い雰囲気に反して、辛辣であることをもうすぐ知ることになる。
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