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しおりを挟む早々にその日はベッドに入った。
朝になって、顔を洗う時に指輪が抜けないか、エレナに試してもらったが、抜けなかった。エレナが全力で引き抜こうとしたので、丁重にお断りした。エレナは力持ちなのだ。指が脱臼してしまうわ。
今日はなんの約束もないので、朝食後は散歩でもしようかと思っていたところに、侍従が先触れをしにきた。
ニックの予想通り、リヒャルトからだったが、もう一件あった。昼食を一緒にとりたいと言う王太子からのお誘いだった。
リヒャルトには是非にも指輪を見てもらって、指輪について説明してもらいたかったが、王太子の方はどうでも良かったので、侍従に断りの手紙を持って帰ってもらった。
昨日、一目惚れだなんだと言われたが、私としては今更である。たとえ番を求める気持ちが大きくても、逃げ回らずに婚約者として誠意ある対応をしてもらっていたら、向き合うことぐらいはしたかもしれないが、本当に今更なのだ。
そんなふうに考え込んでいたら、リヒャルトの来訪が告げられた。ニックも来ていた。
「殿下の誘いを断られたそうですね。『どうしてお前は会ってもらえる』とぐちぐちと言っていましたので、今までの態度が悪すぎたからだと言っておきました」
リヒャルトが会うなり、そう言うので心の中で拍手喝采を送っておいた。
「リヒャルト卿とニック卿のお話の方が私にとって急務ですから」
と表向きは言っておいた。
「早速ですが、指輪を見せていただけますか」
と言われたので、手ごと座っている二人の前のテーブルに置いた。
「抜けないのですよね」
とニックに確認されたので頷いておいた。
リヒャルトも人差し指を指輪の魔石に置いた。ニックが置いた時より熱い。我慢はできるなと思って見ていたら、魔石から何か文字が浮き上がった。ニックが慌てて紙に写しとっている。
「これはなんと書いてあるのですか」
誰ともなく聞いてみると、リヒャルトが答えてくれた。
「これは魔術師が使う魔術文字です。組み込まれた内容が書いてあるのです」
「でも、組んだ魔術師と同等かそれ以上の魔力を持ってないと、こうやって浮き上がらないのです」
写し終わったニックが付け加えた。なるほどニックの魔力では詳細はわからなかったわけだ。
「それでこれは何の魔道具なのですか」
ソファに座り直した二人の顔を交互に見て聞いてみた。
「これは竜人が番と出会っても、番として認知できない魔道具です」
ニックがサラリと言った。
え?どう言う意味なの?この人たちがつけている番不感知のピアスとどう違うのよ。
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