番と言えばなんでもかなうと思っているんですか

ぐう

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 指輪はどんなに頑張っても抜けないと言うことなので、私の指ごとニックの目前に差し出した。
 ニックは指輪をじっと見て、自分の人差し指を指輪の宝石ーーー実は魔石だったのだがーーーに当てた。何かポォっと指輪の周りが温かく感じる。

「これは天才魔術師ボルフガングの手によるものですね。この指輪には使い方とか記したものは残ってないのですか」

「金属の箱に入っていたのですが、随分劣化していました。金属の箱を入れていた箱はありませんでした」

 ニックはじっと考えていた。

「もしかしたらと言うことはありますが、私は魔力量が人並み以下なので、確実に分析できません。リヒャルトを捕まえて検討して、報告します」

 ひょっとして指輪が抜けないから、私もついて行くべき?と思った事が顔に出たからかニックはあっさりと手を振った。

「王女殿下について来ていただく必要はありません。今ざっと分析したもので、リヒャルトと検討します」

 なんだ、それでいいのか。

「ですが、検討してリヒャルトが面会を求めると思うので、会ってやって下さい」

 なんだ、結局会う必要があるのか。

「念のため、お聞きしますが、指輪を最後に外せたのはいつですか」

 ニックは急に真面目な顔で銀縁眼鏡の縁を持ち上げた。

「今朝、手を洗った時には外せたわ」

「今朝以降、魔力のあるものの誰に会われましたか」

 そんな事関係あるのかしらね。

「リヒャルト卿と王太子殿下とニック卿とーーーーそう、アデリナ嬢かな」

「そうですか。これは王太子殿下で決まりですね」

 え、なになに、なんなの教えてほしい。

「どう言う事ですか」

「報告は検討してからですね」

 けち!吝嗇!ニックのこと感じいいなんて思って損した。竜人はみんな敵だーーーーと私が内心騒いでいることに気が付きもしないようだった。

「さあ、行きましょう」

 ニックは応接室の扉を開けて、外に出て壁に大きな穴を開けてくれた。無事、わかりにくい魔術師塔への道を先導して、私達一行を客間まで連れ帰ってくれた。
 客間に戻ると残して行ったエレナが飛んで来た。

「何かあったのですか」

 うーん、あったといえばあったけれど、いきなりずっと停滞していた事が動いたので、私は精神的に疲労していた。

「夕食はいらないわ。もう湯浴みしてベッドに入りたいわ」

 私がそう言うとエレナは目をまんまるに見開いて言った。

「エレオノーラ様が食欲ないなんて一大事だわ!」

 悪かったわね!
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