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しおりを挟む「エレオノーラ、部屋まで送っていきたいが、一刻も早く魔道具導入の根回しをして、実行したい。申し訳ないが、ここで失礼する。魔道具を身につける際は立ち会ってもらいたい。また、連絡をする」
そう言って、リヒャルトに『行くぞ』と声をかけた。
「殿下、私は王女殿下を案内中ですがーーー」
「リヒャルト、殿下は言い出したら聞きません。王女殿下御一行は私が送って行きますよ」
ニックがリヒャルトを宥めて、行くように促した。二人は窓から飛び出して消えた。
「消えた……」
あまりに見事に消えたので、私は窓まで行って、外を眺めた。テオバルトとリヒャルトは既に豆粒になっていた。
「すごい……」
思わずつぶやいて、後ろを振り返ると、一緒に窓の外を見に来た侍女達が頷いていた。
「あの二人は魔力が人並み外れていますから、やろうと思えばあのぐらいできます」
ニックがのんびりソファに座り直して、いつのまにかお茶を入れていた。
「私がやります」
ジュディが慌ててニックに言ったが
「魔術師塔では自炊ですから、なんでもできますよ。お気遣いなく」
そう言って、飄々とお茶の支度をして、私に座るように言って、ティーカップを私に差し出した。
「ところで、先ほどから気にかかっていたのですが、王女殿下がはめている指輪ですが、どのように手に入れられたものですか」
「え?」
「それは魔道具です」
「え!!」
「知らずにはめているのですか。確か、王女殿下のお国では魔道具の開発はされていませんよね」
「ええ、魔力を持つ人がいませんから」
「よろしかったら見せていただけませんか」
「かまいませんが……」
「どなたからもらったものですか」
「昔、この国に嫁いだ王女の片見分けです。私がこちらに来るにあたり父にもらったもの……」
と言いながら指輪を抜こうとしたが抜けないのだ。ジュディに振り返って、指から抜いてもらおうとしたが抜けない。力を入れすぎて指が赤くなっても抜けない。
「ああ、それ発動してますから抜けないと思いますよ」
早く言ってよ。かなり痛かったのに。
それにしてもおかしい。今朝手を洗う時に外せたのだ。今見ても指と指輪の間に隙間もあり外せないようには見えない。何故なんだろう。魔道具だとして、発動した理由は?私の頭の中は疑問符で埋め尽くされた。
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