番と言えばなんでもかなうと思っているんですか

ぐう

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「お、お願い?俺、いや、私が出来ることだろうか」

 なんだか知らないが、無茶苦茶焦っているようだ。

「はい、もちろんでございます。むしろ貴方様にしかできないことです」

「な、なんだろうか」

 じっとテオバルトの顔を見つめると、赤くなって視線を逸らした。ここで会ったが百年目、絶対に言いたいこと言ってやる。だってここ魔術師の塔は、身分の差が無い場所なんだから。弱小国の王女が強国の王太子に、今までの恨みつらみをぶつけてもいい場所だ。もちろん、先程リヒャルトも言ってたけれど、礼儀は弁えるけれどね。

「……婚約をあなたから解消して下さい」

「婚約?婚約解消?なんのために?」

 あれ、この人賢いことで有名な人じゃなかった?なぜこんな簡単なことが理解できないのだ。

「そうです。あなたが散々嫌がって逃げ回ってる、あなたと私の婚約です」

「私が逃げ回っていた?」

 何かおかしい。そう思ってリヒャルトを見ると、リヒャルトも訝しげにテオバルトを見ていた。

「テオバルト様、あなたは今までこの婚約が嫌で、逃げ回っていたではありませんか。自分でしておいて初耳のような態度はおかしいですよ」

 リヒャルトにきっぱり言い渡された。

「……そうだな。私は最低な態度を取っていた。婚約は解消されても仕方ない、が……」

 なんかごにょごにょ言ってるけれど、ちょっと待って。そこ違う。今確かに、私が婚約解消を言い出してるけれど、国と国の関係では、私が解消を言い出したのではだめなのよ。あなたから言い出してもらわないと。本当に弱小国は辛いわ。

「王太子殿下、先程ホーフ侯爵令嬢に会いました」

「え、ああ、失礼な態度を取っただろう。我が国のものがすまない」

 この人謝ることできるのか。じゃあ、希望持っていいかな。

「態度はどうでもいいのですが、この国には彼女のように王太子殿下に片思いしている貴族令嬢は多いのではありませんか」

「さ、さあ」

「きっと多いです」

 だって見た目も条件もいいもの。番を追い求めていると知っても、何とか王太子の気持ちを手に入れたかったアデリナのようにね。

「わざわざ他国の王女を娶って、子供を産ませたら離宮に放置などと、他国の恨みを買うようなことをしないで、自国で王太子殿下を慕っていて、王妃になれるなら相手からの愛情はいらないと言う相手を見繕うべきです」

「え、なぜそんなことを知っているのですか」

 テオバルトが少し驚いたように、目を剥いた。そうよね。国王夫妻の夫婦仲をなぜ知ってるかと思ったわけね。

「テオバルト様、王女殿下は王妃陛下と一対一で話されて事情は全てご存知です」

 リヒャルトがそういうと、意外だったらしくまた目を剥いた。美形って目を剥いても美形ね。ふん!
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