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しおりを挟むはい、私が長々と説明されていた犠牲者のエレオノーラです。
これでも、母国では気高く美しい王女だって評判なのにね。それなのに先祖返りの婚約者に据えられた。
たしかに、我が国はキルンベルガーに逆らえない。軍事的に劣っているから、万が一、戦争になったら、あっという間に国土は灰塵に帰してしまうだろう。
それでも、半分騙されての婚約よ。話が来たときには、先祖返りであるとの話はなかったので、父王はためらいながら受けた。
キルンベルガーの王族達の番に対する執着は、近隣諸国の王家にはよく知られている。近隣諸国の何人もの王女が、王太子の婚約者となり、嫁いでいったが、先祖返りの王族で無くとも、竜人の血で番を求めるのか、婚姻まで行っても、どこかぎこちない夫婦になると聞く。
とか言う我が国も、十代前の国王の王女が王太子に嫁いでいる。
竜人の血のせいかキルンベルガーの王族は美丈夫が多いから、その王女は婚約者になって、顔合わせで、のぼせあがって、愛をぶつけたらしい。かなりチャレンジャーな私のご先祖様である。
その愛はスカッと空振りして、困ったような顔をされただけだと王妃になった王女の書簡が我が国に残されているのだ。
先祖返りでは無い国王でも、名君だったらしい。でもご先祖様がどんなに愛を囁いても、義務的に閨を済ませて、自室に戻るような国王だったらしい。
え、生々しい夫婦生活をなんで知ってるかって?もちろん書簡が残っていたからですよ。
結局子供はできて、王妃としての公務を果たし、仲良さそうな国王一家に見せかけていただけで、幸せになりたいって泣き言だらけの書簡が残ってるの!
だからキルンベルガー王国から、打診という名の強制の縁談が来た時に、そりゃもう大騒ぎ。断ったら灰塵に帰すか軍事的に不利に追い込まれる。返事は一つだろう。
国王夫婦に王女は私一人。両親は仲のいい夫婦で側室などいなかった。王子三人に王女が一人。それが私!貧乏籤!仲良しの両親見てるから、私だって婚姻に夢が有った。王女だから政略結婚も覚悟してたけど、努力して歩み寄って行きたいなんて思ってたものよ。 でも、キルンベルガーの王族だったら、愛ですらスッカスカなんだから、努力なんて蹴っ飛ばされてしまうに違いない!
ああ、不幸な明日が見えるようとまだ十歳だった私は絶望したわ。
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