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新しい世界
夏休み旅行記~王都編~
しおりを挟む夏休み旅行と思ってワクワクしていた俺の気分は今どん底にブルーな気分だ。王都も観光としてみてまわると思っていただけなのにどうしてこんな事になっているのか。
近衛邸を朝早くに出発して、王都にある秋人の研究所の近くの別邸で一旦昼食兼休憩を挟み、王様が居ると言うお城に向かうための正装に着替え、おめかしまでさせられていた。
「雪、よく似合ってる」
「うぅ…行きたくない…」
秋人とお揃いの服に着替え、褒められるが全然嬉しくない。いや、服装自体は良いのだがこれから王様に会うと言うのが…。秋人はすっかり着こなしていて、まるで異国のモデルさんみたいだ。正直かっこいい。ワックスで髪を流すように固めてあるのもまたいつもと違った雰囲気がある。
「秋人様、車の準備が整いました」
「ああ、ご苦労」
俺は嫌々車に乗せられ、王様がいるお城に向かう。高い丘に聳え立つ一際立派なお城がそれだ。お城に辿り着き、まずは何重にもあるセキュリティゲートを潜らなければならない。
許可証に身分証明書、荷物検査や赤外線センサーなどあらゆるものをクリアしてようやく俺達はお城にある最後の門まで辿り着いた。
「ようこそお越しくださいました。秋人様に雪様。私は護衛騎士団長の木之下と申します」
4、50代の男性が出迎えてくれて、一礼した後、ギギギと重い扉が開く。お城の中のホールにはズラリと甲冑を被った騎士達が並んで敬礼しており、お城の中の豪華さも勝ることながら圧倒される光景だ。
(俺の表の顔は表情を崩さず笑顔を保っているが、内心はめちゃくちゃ驚いている。映画の中に入ったみたいだった)
俺達は団長さんに連れられ案内されるままその後をついて行く。そして直ぐに謁見の間へと辿り着いた。
(隣で笑顔でいるだけ…)
何度も心の中で唱える。
心臓はバクバク鳴って、緊張で喉から飛び出そうだ。隣の秋人は平然と前を向いており、でも優しく腰を抱いて寄り添ってくれる。
「雪、まずは陛下が頭を上げていいと言うまでは頭を下げておけ。後は黙って居るだけでいいから」
「うん…」
騎士団長がその扉を開けると部屋の中は金ピカに輝く神々しさの内装と、赤い絨毯が引かれており、奥に階段があり玉座がある。絨毯の上を俺は秋人にエスコートされながら歩く。秋人が途中で脚を止め、俺もそれに習いピタリと止まる。片膝を付き頭を垂れる。それに俺も続いた。
静まりかえった部屋の中、頭の上の方から声がする。
「頭を上げよ。発言を許可する」
王様の低めの透き通った声が響く。その声で俺達は頭を上げる。王様の顔はこちらから見えないようになっているが、椅子には王様がどしりと座って威厳があった。俺は口を閉ざしたまま、秋人が口を開く。
「陛下この度はお時間を頂きありがとうございました。改めまして、私は近衛秋人でございます。本日は以前より進めておりました新しいエネルギー開発の話し合いの他に、こちらに居ます中山雪のご紹介に伺いました」
秋人の言葉に王様は頷いたように口を開いた。
「秋人よ久しいな。今日の晩餐に二人を招待する。この国の新たなるエネルギー開発に関しては第二王子に一任する事にした。第二王子と話を進めてくれ」
「かしこまりました」
この短いやり取りで、その場は終了。俺達は直ぐに謁見の間を出た。
(ウッ……あ……緊張した……)
ふぅと深い息が零れた。
秋人にふっと笑われたのが分かった。
(し…仕方ないだろうこういう所慣れないんだから!)
そのまま俺達は団長さんに休憩出来る部屋に案内され、程なくして秋人は第二王子と話し合いがあると言う事で部屋を出た。
何かあればベルで人を呼べと言われたが、何もあるわけない。一応扉の外には護衛の騎士の方も居るみたいだから余りうろちょろも出来ない。
一人の俺はソファに座って、用意されたクッキーとお茶を飲んでただ時間を潰す事しか出来なかった。
(ああ…この服早く脱ぎたいよ…)
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