幸せを噛みしめて

ゆう

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新しい世界

閑話:有能な秘書もまた人間

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 佐伯さえき さとる今年で45歳。秋人様の秘書という名の右腕として働いております。

 大学まで常に学年首席、留学経験5箇所、語学・政治・経済・医学、なんでも興味あるものは勉強してきた。
 何を挙げても完璧と言われた私の今の興味は秋人様の生み出すもの全てだ。
 人の想像もつかない発想をお持ちの秋人様に俺は魅了された。
 人間はこんなに急成長するのか。
 医学や科学において全てを根底から塗り替えた秋人様。神様が創り出したと言われても頷くほど、彼は普通の人間とはかけ離れていた。

(ああ、秋人様の生み出すものを間近で見てみたい)

 とはいえ、平民出身の人間は秋人様と接する機会なんてなかった。私はどうしても諦めきれなくて、熱意と共に論文を秋人様に送り続けた。
 貴族達は平民からの手紙なんか読む前に捨てられてしまうのが関の山だろう。
 だが秋人様は違った。
 私の論文に興味を示してくれて、秋人様の研究チームの元で働ける事になった。
 それ以外でも知識のあった私は気づけば秋人様の右腕としての地位を掴んでいた。

 今日も秋人様の生み出すものの為、働いております。

「佐伯、今世間は夏休みだが家族サービスをしているのか?」

「は、と申しますと?」

 仕事以外の話はほとんど秋人様と会話をする事はない。
 新しい事業の話し合いに向かう途中、突然の会話に私は秋人様の言いたい意図が全くわからなかった。

「高校生と中学生に子供がいるんだろう?仕事ばっかりで何もしていないんじゃないか?」

「……秋人様は私と同じ仕事人間かと思っておりました…。しかし雪様の事を見ていると…確かにそうですね…。たまには休暇を家族で過ごすのも良いかもしれませ」

「ああ、そうしろ。きっと喜ぶ」

 雪様が現れてから、たまに見せるようになった笑顔。正直人間離れしている秋人様はそう言った感情を持ち合わせて居ないのかと思っていた。
 それだけ雪様は秋人様にとって大切な人なのだろう。
 ふと最近見ていなかった家族の顔が頭によぎる。
 秋人様の元で働ける事を妻も応援していて、子供達の事は任せろ!と肝っ玉タイプだったから任せきりだった様に思う。子供達も秋人様を尊敬していて、私は安心してここで働けている。
 が、もしかしたら私には言えない辛いこともあるかも知れない。こうして子供が二人居ることも昔なら有り得ない。秋人様が居てこそなのだ。
 秋人様のそんな気遣いに気付かされるなんで私もまだまだ未熟者だと思った。

 さぁ仕事を終わらせて、早く愛する者の元へ。

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