幸せを噛みしめて

新しい世界

新学期2

 

　今日も今日とて不躾な視線と、ご丁寧な悪口の手紙攻撃を受けつつもお昼の時間になれば、ほっとできる時間だ。
　学食は人が多すぎるので、最近はもっぱら購買でパンを買って人が居なさそうな場所で食べる。
　美味しい学食がちょっと恋しいけど、あんな中で食べるほど俺は神経は太くない。
 
 
　ベンチに腰を下し、買ってきたパンの袋を開けて頬張る。
　うん、まぁまぁだな。
　そろそろパン系に飽きてきた。
　煩いかもしれないが、学食にいくかーなんて考える。
　ピチチッと可愛らしい鳴き声がすると、小鳥たちが匂いを嗅ぎつけて集まってきた。
　パンを小さくちぎり、小鳥たちに上げると、喜んでつついていた。
 
「まぁ…もう少しここでいっか…」
 
　この時間だけは穏やかに過ぎていった。
 

　放課後はこっそり空き教室でスポーツしている学生を見たりして過ごす。
　山奥の寮生活なんて暇すぎる。
　なにか部活に入ってもいいけどなーとも思う。
　前世では部活には入っていなかったし、あんまり運動が得意ではなかったから、汗をかいてスポーツに励む少年たちの青春は憧れる。
 
「雪ちゃん放課後暇なの？」
 
　ぼんやりと教室の窓側で外を眺めていたら声を掛けられてびっくりする。
　今こんな俺に声かけてくれる人なんていないと思ったから。（いやがらせ以外ではね）
　声の方を向くとニコニコとした渚が立っていた。
 
「えっと…まだ部活とか決めてなくて…」
 
「ふーんそっか！なら一緒に生徒会入らない？」
 
「え？生徒会？」
 
　生徒会と言えば、初日に三男の祐希が生徒会で会計しているとか秋人が言っていたなぁ。
 
「で、でも生徒会ってなりたいからなれるのもじゃないでしょう？」
 
「んー、雪ちゃんは理事長や圭とかと仲良いんでしょう？なら大丈夫だよ」
 
　ならってなんだ、ならって。
　渚にまでバレてるし。そりゃそうか。
　と、がっくし肩を落とす。
 
 
「僕ね、中学でも今の生徒会の人達と生徒会やってたんだ。それで、高校に上がって会長から推薦してもらったし、とりあえずお試しで生徒会の仕事お手伝いしたんだけど忙しくってね。猫の手も借りたいなーって思ってたから雪ちゃん暇そうだしいけるんじゃないかって！同じ一年だし、一緒だったら嬉しいなぁ～」
 
　ウッ、渚のキュートな笑顔を頂きました。
　渚、五男だけあって、甘えるのが上手な子。
　顔も秋人じゃなくて、俺に似てしまって童顔の男の子。
　それでも、この世界では俺よりも身長が高くて、男らしさも漂う。
 
　俺が返事をせず昔の思い出に浸っていると渚が腕を引っ張った。
 
「じゃあいこっか！」
 
「ま、まってまだ返事してない…！」
 
　おおぅ、話聞いてくれない人多くない？
　渚は想像よりも力強くてグイグイと俺を引っ張っていく。
　俺はその手を振り払えないまま、生徒会室に連れていかれてしまうのだった。