幸せを噛みしめて

新しい世界

新しい世界では

 

 生まれ変わった俺は中学三年まで平凡な生活を送っていた。
 名前はそのまま中山雪ナカヤマユキだったから、名前を呼ばれてもすぐ反応出来るのでよかった。

 前世でもこの頃までは平凡だったんだよなーと、俺は車の中で変わる景色を眺めながらそんな事を思った。
 
 到着しました。
 
 と運転手が告げる。
 
 俺は少ない荷物片手に車がら降り、その頑丈そうで精巧な作りの門の前に立っていた。
 
 するとギギギと音が鳴ると門がひらく、門の先には一人の男性が立っていた。
 
「初めまして、入江和真イリエカズマです。中山雪さんでお間違えないですか？」
 
「え…！、……あ、はい」
 
 俺は目の前に現れた人に釘付けだった。
 だって、その人は前世で一番仲の良かった友達だったのだから。
 と、いっても、彼は歳２5，6に見えた。
 俺とは違う年齢のようだ。
 それにこの反応は俺の顔をみても知らないって感じっぽい。
 そりゃそうか。俺だけが前世の記憶を持っているのだから。


「私は貴方の担任になる予定です。理事長がお待ちですから、ご案内します」

 そういわれて俺はかず…入江先生の後について歩く。
理事会室への道のりは桜の木が綺麗に咲いていて、春の匂いが漂っていた。