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始まりは
高校生になってから5
しおりを挟む顔の腫れも落ち着いて、高校にもいつものように通いだした。
和真もものすごく心配してくれた。
嬉しかった。
もう一つ嬉しかった事がある。
それは俺の発情期が来なくなった事だった。
予定日を過ぎても発情期のようなものは来ず、一応いつもの病院にいって検査もした。
心の問題や、ホルモンのバランスの崩れから発情期が止まる事は若いうちは良くあるらしい。
その結果はもちろん病院から秋人に伝わったみたいで、発情期の時期を過ぎても秋人から直接連絡が来ることはなかった。
両親も気を遣ってなのか、その件に関しては触れられる事がなかった。
「あーー、発情期が来ない生活ってサイコー」
「まーたそんなことを言って…」
すべてあった事を和真だけには伝えていた。
「嫌いな秋人の顔を見なくてすむ。俺がΩだって実感しなくていい瞬間が減る事は幸せな事だよ?」
「そっか…」
曖昧な表情をする和真。
和真の言いたいこともわかる。
けれど、俺には今が幸せでしかなかった。
発情期がこない番なんてさっさと番を解除してほしいくらいだった。
一年生が終わり、高校二年生になっていた。
俺と秋人の関係は変わらないまま、発情期も来ないまま、平凡な日常が訪れていた。
「ただいま」
そう言って、いつものように帰宅する。
「おかえり、今秋人君が来てるわよ」
そう母親が嬉しそうに言う。
「……はぁ?」
急いで2階に上がり、俺の部屋を開けると、本当に秋人がいた。
「俺の部屋でなにしてんの」
俺はいかにも嫌そうな顔見せる。
久しぶり、元気にしてた?なんて声を掛けるはずもない。
「雪を待ってた」
そりゃみりゃわかるけど、とは言わず、俺はカバンをおいて、ブレザーをクローゼットに閉まった。
「今日、お前の誕生日」
「へ?あーそうだったか…」
「俺の誕生日は先月終わった」
あー、全く忘れていた。
自分の誕生日も、秋人の誕生日も。
だって、生まれたことに感謝するような人生ではなかったからだ。
母さん父さんごめん。
ぼんやり立っていた俺を秋人は抱き寄せると、そっと首元に触れる。
「っ…!」
うなじの噛み痕を触られるのは慣れない。
ぞくぞくと刺激が身体を走る。
今日は珍しく優しいオーラの秋人はそのまま顔を寄せて俺の唇を奪った。
「っ、ん…」
ついばむような優しいキスだった。
コイツにもこんな事が出来るのか、とぼんやり考えていた。
その後は会話もなく、ただ抱きしめ合った。
触れるのは、あの事件以来だった。
母が、誕生日だからと奮発した料理とケーキを秋人と食べた。
もちろん俺は発情期ではないから、その夜秋人は自分の家へと帰って行った。
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