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本編
第6話 巡り会い
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神様は6日間でこの世界を作って、7日目に休んだって言うけど、私たちにとっちゃ作ったまま放置しぱなっしなんじゃないかとすら思える。
勝手に回る世界。勝手に変化していく世界。
それが悪いことだとは思わないし、変化は当然の摂理で、流れる水の如く。変化しないことの方が難しいんだろう。
ーーかといって、それを眺めるのはなんともまぁ退屈なもんだ。
「ふぁあ……」
のどかな月曜、朝のホームルームに見下ろすグラウンドは静かで。朝練の眠気がじんわりとやってきた。
寝不足が祟って調子が悪い。
大会も近いのに気が抜けてると我ながら思うけど、私一人張り切ったところで部の空気がどうにかなるわけでもないし。どうにもならないなら、どうにかしようとするだけ面倒って話で……。
「んぁー……ねみ……」
突っ伏した机の冷たさが気持ち良い。
短く刈りそろえていたはずの髪はいつの間にか割と伸びていて、そのうち切らなきゃなぁとは思う。でもまぁ、もうしばらく放置することになりそうだった。
……詰まる所、なんとなく神様が退屈凌ぎに下らないゲームを提案したくなる気持ちはわからんでもない。
流石に聞いたときはふざけんなって思ったけど、箱庭を作って自動で動く人形劇をみてるだけじゃ飽きもするんだろう。緩やかに変化していくものをなんとなく眺める事は眠気を誘う。
それがいけないことだとか、そういう話じゃなくてただそういう娯楽には刺激が無いだけなんだ。
リラックスして眺めるだけの娯楽。放っておいても何かしらの変化は起きている。
だけどそれは劇的なものじゃぁない。
ただ毎日を繰り返して、ただ同じ日々を繰り返して。そしてその先に「ちょっとした変化」が積み重なった結果、全体として社会が変わる。
それは流れに転がされた石がいつの間にか形を変え、川の形が変化していくのに似ている。
だからまぁ……、神様もそういう遊びには飽き飽きしていたんだろうなぁーと思った。
川の中に石を放り込んでみたり、水に手を差し込んで掻き回してみたりしたくなったんだろう。きっと。
私たちにとっては傍迷惑なのかもしれないけど、どうしようもないんだから、ただ流されるがままに……川の流れのままに……ーー、
「ふぁー……どうでもいいか……」
どっちにせよ関係のない話だ。
好きにやってくれればいい。必要とあれば戦うし、そんときゃそん時だ。
そうやって一眠りしようと瞼を閉じた矢先、
「よろしくねっ」
突然声が降ってきた。
「……んぁ?」
その声の主は隣をすり抜けると椅子を引いて腰掛ける。
見慣れない制服、見慣れない顔。
教室の最後尾。窓際の一番端の席。クジで引き当てた一番の特等席の隣にはいつの間にか机が増やされていて、……誰だこいつ。
「……はぁ……?」
肩より少し先まで伸ばした綺麗な髪。
其奴は柔らかそうな笑みを浮かべ、窓から入り込んできたそよ風に前髪を揺らした。
「えへへっ」
それが、私とミユとの出会いだった。
勝手に回る世界。勝手に変化していく世界。
それが悪いことだとは思わないし、変化は当然の摂理で、流れる水の如く。変化しないことの方が難しいんだろう。
ーーかといって、それを眺めるのはなんともまぁ退屈なもんだ。
「ふぁあ……」
のどかな月曜、朝のホームルームに見下ろすグラウンドは静かで。朝練の眠気がじんわりとやってきた。
寝不足が祟って調子が悪い。
大会も近いのに気が抜けてると我ながら思うけど、私一人張り切ったところで部の空気がどうにかなるわけでもないし。どうにもならないなら、どうにかしようとするだけ面倒って話で……。
「んぁー……ねみ……」
突っ伏した机の冷たさが気持ち良い。
短く刈りそろえていたはずの髪はいつの間にか割と伸びていて、そのうち切らなきゃなぁとは思う。でもまぁ、もうしばらく放置することになりそうだった。
……詰まる所、なんとなく神様が退屈凌ぎに下らないゲームを提案したくなる気持ちはわからんでもない。
流石に聞いたときはふざけんなって思ったけど、箱庭を作って自動で動く人形劇をみてるだけじゃ飽きもするんだろう。緩やかに変化していくものをなんとなく眺める事は眠気を誘う。
それがいけないことだとか、そういう話じゃなくてただそういう娯楽には刺激が無いだけなんだ。
リラックスして眺めるだけの娯楽。放っておいても何かしらの変化は起きている。
だけどそれは劇的なものじゃぁない。
ただ毎日を繰り返して、ただ同じ日々を繰り返して。そしてその先に「ちょっとした変化」が積み重なった結果、全体として社会が変わる。
それは流れに転がされた石がいつの間にか形を変え、川の形が変化していくのに似ている。
だからまぁ……、神様もそういう遊びには飽き飽きしていたんだろうなぁーと思った。
川の中に石を放り込んでみたり、水に手を差し込んで掻き回してみたりしたくなったんだろう。きっと。
私たちにとっては傍迷惑なのかもしれないけど、どうしようもないんだから、ただ流されるがままに……川の流れのままに……ーー、
「ふぁー……どうでもいいか……」
どっちにせよ関係のない話だ。
好きにやってくれればいい。必要とあれば戦うし、そんときゃそん時だ。
そうやって一眠りしようと瞼を閉じた矢先、
「よろしくねっ」
突然声が降ってきた。
「……んぁ?」
その声の主は隣をすり抜けると椅子を引いて腰掛ける。
見慣れない制服、見慣れない顔。
教室の最後尾。窓際の一番端の席。クジで引き当てた一番の特等席の隣にはいつの間にか机が増やされていて、……誰だこいつ。
「……はぁ……?」
肩より少し先まで伸ばした綺麗な髪。
其奴は柔らかそうな笑みを浮かべ、窓から入り込んできたそよ風に前髪を揺らした。
「えへへっ」
それが、私とミユとの出会いだった。
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