《テスト版》スキル(変身アイテム) 〜優秀な勇者の兄と比較するネガティブなTS変身ヒロインな愚弟の愚かな奮闘記!?〜

水先 冬菜

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第一章

魔族。再び、侵攻

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 当然、聖女が神様に、何か、耳打ちしたかと思えば、魔族軍が再び、ここ、王都に向け、信仰を開始したと僕に教えて来た。


「数は?」

『確かな情報ではありませんが、およそ、二千以上。わたくしの神眼まなこで、見通す限りでは、も混じっていそうですね』

「は? 四天王?」


 ウザルの他にも、まだ、いたのかよ!?


『これは…………まさか、《ギザルム》?』


 ギザルムだって!?

 もしかしなくても、《鮮血のギザルム》の事を言っているのか!?


 《鮮血のギザルム》


 その名前は、人類側でも聞いて久しい名だ。

 およそ十年前-------------

 僕が、まだ、五歳に満たないか、それくらいかの頃に、四天王入りした上位魔族で、通称《国落とし》としても呼ばれている。

 単騎で、国という国に乗り込んでは、その両手拳が、敵の血で、真っ赤に染まるまで、戦いを辞めず、狂信的な戦闘強で、あの双魔剣のウザルと違った意味で恐れられている。

 そんなヤバい奴が攻め込んで来ているとなると…………。


「兄は…………勇者はどうしてる?」

「『……………………』」


 神様と聖女の反応からするに、そういう事なのだろう。

 あの正義感溢れる兄の事だ。

 確実に最前線で、戦っている。

 それどころか、仲間の協力を得つつギザルムと戦っている最中だろう。

 その証拠に、『聖女ミリア。あなたは勇者と合流を---------』とか言って、聖女の姿が消えた。

 きっと、勇者である兄の元へ転移させ、送ったのだろう。


「……………………」


 僕はどうしたら良いのだろう。

 流石に、四天王相手だと、僕が勇者である兄の役に立つとは思えない。

 僕の脳裏に浮かんだのは、先日のウザルとの戦いの事だ。

 あの時、何とか倒す事は出来たものの----------正直、僕が倒したとは思っていない。

 あの時は一方的に、ウザルにやられて、子供達の身に危険が迫って-------------ブチ切れた。

 怒りで、頭の中が真っ白になって、気が付いたら、ウザルの野郎が消し飛んでいた。

 つまり、その時の僕は意識がなく、無意識で倒したと言える。

 のだ。


「……………………無理だ…………」


 今の僕では、心を制して、スキルを使いこなせない。

 神様から頂いた例のダイヤも、どんな能力が付与されたのか、どんな武具を得たのか、不明な点が多い。

 だから、此処は勇者である兄に任せて-------------


『本当に…………それで、良いのですか?』

「っ!?」


 いつの間にか、神様の顔が、互いの額がくっつきそうな程、近くにあった。

 その瞳は、じっと、僕の瞳から離さずに見据えられている。

 まるで、僕の心情を分かり切っているかのように…………。


「……………………」


 分かっている。

 それじゃあ、いつまで経っても駄目だ。

 いつまで経っても、何も変わらない。

 何かを変えたいなら、どんなに無様にも、情けなくても、勇気を持って、ほんの一歩…………例え、ほんの数ミリでさえも、前に進まないと-------------


「だけど…………僕なんかが…………」


 僕なんかが、前に進んで、意味があるのか?

 僕は今まで、努力して来た。

 自分が知り得る限りの知識を必死になって貪った。

 勇者である兄の隣に立てるように、死ぬ気で肉体を鍛えた。

 そして、騎士の道を志して、夢に敗れた。

 それで、落ちるところまで落ちた。

 そんな僕なんかが、助けに行ったところで…………。


『意味があるかなんて誰にも分かりません。今、大事なのは、あなたがどうしたいか。そうではありませんか?』


 僕がどうしたいか?

 そんなの決まってる。

 僕は兄を…………勇者である兄を助けたい。

 そう思って生きて来た。

 だから、僕は……………………!!!


「私…………?」


 何やら、違和感を抱いた。

 気が付いた時には、いつの間にか、神様の姿は消え、あの女性の姿へと変わっていた。

 そして、僕の目の前に…………何やら、光輝く何かがある。

 これは…………短剣ダガー

 それは、光短剣だった。

 何の変哲もないシンプルで…………何とも、綺麗な剣だった。

 それが、僕の掌に収まると、光は止み、白い短剣が姿を現した。


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