《テスト版》スキル(変身アイテム) 〜優秀な勇者の兄と比較するネガティブなTS変身ヒロインな愚弟の愚かな奮闘記!?〜

水先 冬菜

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第一章

神託

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「こちらですよ」


 あの後、聖女と会って、すぐの事だ。

 僕は聖女である彼女-------------ミリアに連れられ、とある場所へと来ていた。

 何でも、僕に来て欲しい所があるらしいが、一体、何処だろうと思い浮かべてみれば、聖女である彼女の象徴とも言える《教会》だ。

 あの魔族の侵攻で、建物は少し壊れてはいるが、外目で見るからに、倒壊の恐れは然程、無さそうだ。

 でも、何で、僕をこのような場所に?

 そう疑問に思って、小首を傾げていると-------------


「あなたにお会いしてたがっている御方がおられるのですよ」


 僕の疑問に対して、聖女様がそう答えた。

 この人、僕の心が読めるのでは? と内心、恐れ慄いたが、聖女様は楽しげに微笑むだけ…………。

 うわぁあ~。

 何か、見た目と裏腹に、腹に逸物を抱えてそうな人だな…………。

 人、それを腹黒という…………じゃなかった。

 僕みたいな無能に会いたがっている人がいるだって?

 聖女様の口調から考えると、どうやら、相手は、かの聖女様が尊敬している-------------もしくは、彼女よりも上の立場にいる者という事か。

 一体、僕みたいな奴に、何のようがあるんだか。

 そう思いながら、聖女と共に、教会内に入り-------------


「……………………」


 理解出来ない事態に陥っていた。

 此処は、草原?

 いや、近くに海らしきものもある。

 それに、何だか、此処はのどかで、安らぎのようなものを肌で感じるというか。


『お気に召しましたか?』

「っ!?」


 突如、背後から声を掛けられて、僕は飛び退いた。

 そして、目の前に、聖女様の隣に立つ-------------これまた、聖女様顔負けの美女が…………。

 なっ!?

 誰!?

 というか、いつの間に!?

 さっきまで、こんな人いなかった筈なのに…………。

 いや、それ以前に-------------


『どうかしましたか?』


 この人、

 何故だか、この美女に目が離せない自分がいた。

 何と、表現すれば良いのか、分からないが…………。

 一目見た瞬間、普通の人とは違う何かを感じたというか、何というか…………。


『流石ですね。わたくしを見て、一目で、人ではないと見分けますか。これはこれは、面白い成長をしてくれていますね』

「……………………」


 一つ分かった事がある。

 ああ、この人も、そこにいる聖女と同じで-------------


『腹黒くありませんよ?』

「……………………」


 心を読まれた。

 完全に読まれたと確信した。

 というか、その容姿で、ぷんぷんと頬をリスみたいに膨らませて、怒ってられても-------------

 大の大人が、かわい子ぶっても、無理があるような…………。


『無理ではありません!!! これでも、わたくしは現役です!!!』


 だから、心を読むなって!!!


「神よ。もうそろそろ…………」

『…………それもそうね』


 隣に控えていた聖女が、彼女を諭すように声を掛けた。

 って、やっぱり、この人、神様なのね。

 さいですか。

 彼女は、姿勢を正すと、先程までの雰囲気は消え-------------


「…………っ…………!?」


 思わず、唾を飲み込んでしまう程、何とも、触れ難いと言うか、畏れ多いというか。


「……………………」


 そんな彼女を見た瞬間、あまりにも掛け離れた存在感。

 まさしく、彼女は神だ。

 そう一瞬で理解出来てしまった程、彼女の存在は異常だ。

 少なくとも、人の理解の範疇を超えている。

 そんな神が、何故、僕のような無能に-------------


『あなたは無能なのではありません』


 はい。また、心を読まれました。


『あなたはまだ、己に秘められた力を理解していないだけ。あなたには、かの勇者にも負けない力を有しているのです』


 勇者にも負けない力?

 一体、何を言って…………。

 ふと、脳裏に浮かんだのは、女になった時の自分の姿だった。


「まさか…………」


 再び、俺の心を読んだであろう神が、力強く頷いた。


『そうです。かの姿こそ、あなたの本当の力。勇者と共に、世界を切り開ける数千年も前の過去に失われた救済の力』


 そう悲しげに神が答えると、昔の話を語り始めた。

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