《テスト版》スキル(変身アイテム) 〜優秀な勇者の兄と比較するネガティブなTS変身ヒロインな愚弟の愚かな奮闘記!?〜

水先 冬菜

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第一章

夢、幻よ

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「……………………」


 何処か、遠い場所にいる。

 そんな気がした。

 周りを見渡すと地平線の先まで広がる水面。

 見上げると、その水面を優しく照らす万月。

 その水面の上に立つ僕を中心に波紋が広がって行く。

 此処は、どこなのだろうか?

 確か、僕はウザルとかいう魔族と戦って、それで-------------

 駄目だ。

 思い出せない。

 意識ははっきりとしているのに、何か、思い出そうとすれば、何か、霧が掛かっているようにボヤけてしまう。

 もしかして、僕は死んだのか?


『死んではいませんよ』

 
 突然、声がした。


『あなたは、まだ、死んではおりません』

「誰? どこにいるんだ?」

 
 そう語り掛け、周りを見渡すが、やはり誰もいない。

 だが、その声の主が近くにいる。

 それだけは、何故か、分かった。


『私はあなた、あなたは私。表裏一体。コインの裏と表の関係。それ以上でも、それ以下でもない。ただ、それだけです』

「いや、意味分からないだが…………」

『分からなくて当然です。だって、あなたはまだ、感情に身を任せているだけ。あなたが、あなたを知ろうとすれば、心から願えば、自ずと力は目覚めます』

「……………………」


 ほんと、意味分からん。

 それ以前に、会話にすらなってない。

 思わず、ガックリして、目を開ける。

 正しく言えば、目を開けて、驚きのあまり固まった。

 何せ、水面に映る自分の姿が、女の時になった姿で、怪しく微笑んでいたから-------------


『あなたが、あなた自身の力に気付く事を願っていますよ』


--------------------------------------------


「うわあああああああっ!!!」

 
 僕は勢い良く飛び起きると、思わず、肩で呼吸を繰り返していた。

 何だあれは?

 夢?

 あれが夢?

 それにしては、あまりにも、怖過ぎるんですが!?

 って、あれ?

 此処は何処だ?

 周りを見渡すと矢鱈と豪勢な部屋で寝かされていた。

 いや、なんか、見覚えがあるような…………。


「僕は、何で…………こんな所に…………?」


 色々と混乱しているが、まずは状況把握が先だ。

 確か、僕はあのウザルとかいうクッソタレな魔族を倒した。

 倒した後、どうなったんだけ?

 え?

 あれ?


「…………ぅんん…………」

「……………………え?」


 今、何か、声がした?

 というか、僕の手に何か、握られているよう…………なっ!?


「……………………」


 僕の手の先に、違和感がある方へ視線を向けて-------------僕は考える事を辞めた。

 辞めて、手に握られている何かをそっと、引き剥がして、戸口のある方へ抜き足差し足で慎重に慎重を期して、動き始める。

 後、もう少しもう少しで-------------へぶっ!!!


「レイヤ!!!!」


 扉の取手に、手が届きそうになった瞬間、勢い良く扉が開き、思いっきり顔を強打した。

 ぐおおおおっ!!!

 痛い!!!

 超痛いよ!!!

 一体、何処のどいつだよ!!!?

 扉を勢い良く…………あけ…………やがっ…………て…………?


「あ…………」

「レイヤ!!!」


 目の前にいたのは、勇者である兄、アルベール・ミスフィリアだった。

 兄は僕を見るなり、力強く抱き締めて来て……………………超痛い!!!!!


「痛い痛い痛い!!!! 兄様!!!! 死ぬ、ほんとに死んじゃう!!!! 死んじゃ……………………あっ…………!」


 やばい…………駄目だ、これ…………。


「レイヤ? レイヤああああああああーー!!!!!!」
 
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