《テスト版》スキル(変身アイテム) 〜優秀な勇者の兄と比較するネガティブなTS変身ヒロインな愚弟の愚かな奮闘記!?〜

水先 冬菜

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第一章

謎の少女

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 王都から数メートル離れた王都へと続く街道-------------

 その道を勇者パーティーが駆る騎馬集団が全速力で疾走していた。


「急げ!!! 急ぐんだ!!!」

「アル!! これ以上は無理よ!! いくら魔法で速度を強化していたとしても、馬達の体力が持たないわ!!」

「分かっている!!! だが、悠長にも言ってられないだろう!!!」


 勇者であるアルベールは焦っていた。

 先程、遠距離通信用の魔道具からもたらされた情報が確かなら、進軍して来ている魔族軍の中に、あの双魔剣のウザルがいる。

 かつて、奴と戦い、辛うじて撃退に成功した厄介な相手。

 奴は勇者である俺が知る限りで、一、ニを争う危険な魔族だ。

 嬉々として、強者との戦いに挑み、もし敗北すれば、退屈させた罰と称して、虐殺する。

 逆に弱者しかいなければ、退屈だからと虐殺を嬉々として楽しむ。

 どちらにしても、人々を虐殺する事しか頭にない危険な奴だ。

 そんな魔族が今、王都にいる。

 急がなければ、王都に住む人々は-------------


「あれを見て!!!」


 突然、隣を疾走する聖女が叫ぶ。

 彼女が指差す先を見れば、王都が真っ赤に燃えていた。

 遠目から見ても、城壁の半分が突破され、相当の被害が出ている。


「くそっ!!!!」


 分かっていた事とはいえ、やはり、やり切れない。

 とはいえ、今の自分に出来る事は一歩でも早く王都に到着して、応戦している騎士や冒険者達と合流する。

 それだけだ。

 そう気持ちを整理して、気を引き締めた瞬間だった。


「…………!? 何っ!?」


 王都の城下町の辺りで、何かが光った。

 もしや、ウザルの奴が…………!!!


「考えるのは後だ!!! それよりも、一歩でも、一秒でも王都に辿り着く事だけ考えろ!!!」


 急げ!!!

 急げ!!!!!!

 あれから、数分、馬を限界まで走らせて、もう目と鼻の先に王都が見え始めた。
 
 完膚なきまでに、破壊された城門の手前には多くの魔族がいるのが見えた。

 見えて-------------違和感を覚えた。


「ねぇ、可笑しくない? 何で、魔族共が逃げ出しているのよ?」


 追走していた魔法使いが、俺の思っていた疑問を口にした。

 破壊された城門の前には、今だに、多数の魔族がいる。

 だが、あれは戦っているというより-------------


「…………敗走している?」


 一体、どうなっているんだ?



--------------------------------------------


「謎の少女?」


 あれから、数時間-------------

 俺達、勇者パーティーの面々は、防衛に当たっていた騎士や冒険者達に合流。

 協力して、敗走中の魔族の残党を駆逐した。

 そして、何故、魔族が敗走していたのか---------それを聞き出す為、急遽、冒険者ギルドの一室をお借りして、生き残った騎士や冒険者の指揮官に事情を尋ねた。

 その結果、聞かされた内容というのが、腰に巻いた大きなリボンが特徴的なまるでドレスのような服を着た少女が、あのウザルと戦い、苦戦を強い慣れながらも勝利した。

 というものだった。

 あの双魔剣のウザルが負けた。

 その事実も信じ難いものだが、それよりも、その少女が、俺の知る人物なら、どうやってこの王都に訪れたのかが疑問になる。

 ここ王都からその少女と思しき人物と会ったの場所は、早馬に強化魔法を施しても半日以上は掛かる距離だ。

 まず、考えて、ありえない。

 現に、俺達、勇者パーティーの面々は間に合わなかった。

 なら、どうやって、その少女は俺達よりも早く王都に辿り着いた。


「……………………」


 どう考えても、答えには辿り着かなさそうだ。

 だが、唯一、分かっているのは、俺達が苦戦したあの双魔剣のウザルを倒せる程の力を有している事。

 それ即ち、もし味方になってくれるのなら、力の拮抗している魔族軍とのパワーバランスが一気に傾く可能性があるという事。

 味方になってくれるのなら…………。


「……………………」


 考えても仕方がない。

 此処は王都の復興作業と合わせつつ、その少女の情報を地道に集めるしかない。

 そう決めて、王都の復興と少女の情報を集める指示を二人に出した矢先だった。


「アル!!!」


 命令を出したと同時に、勢い良く、扉が開け放たれた。

 入って来たのは、魔法使いだ。

 見ると、彼女は肩で息をする程、呼吸が乱れている。

 状況を見るに、何か、あったらしい。


「どうしたんだ? そんなに慌てて-------------」

「どうしたも、こうしたもじゃない!!! 大変なのよ!!!」


 俺の言葉を遮り、彼女は俺の肩を掴むと、思いがけない事を口走った。


「あなたの弟が死に掛けてる!!!」






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