《テスト版》スキル(変身アイテム) 〜優秀な勇者の兄と比較するネガティブなTS変身ヒロインな愚弟の愚かな奮闘記!?〜

水先 冬菜

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第一章

苦戦

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 双魔剣のウザルの剣と僕の拳がぶつかり合い、火花をあげた。


「なっ!?」


 火花をあげて-------------押し負けた。


「かはっ!!!」


 吹っ飛ばされ、瓦礫に突っ込み、受け身も取れず、背を強く打ち付ける。

 なんて、パワー。


「威勢が良い割には、こんなもんか!!!」

「くっ!!!」


 ウザルの追撃を慌てて、避ける。

 避けて、すぐ様、奴の頬を目掛けて、回し蹴りをお見舞いする。

 だが------------------

 嘘だろう!!?

 僕の強烈な回し蹴りを喰らって、吹っ飛ぶどころか---------


「何だ? この陳腐な蹴りは? まさか、それが貴様の本気じゃねぇだろうなぁ…………? もしそうなら----------」

 この俺様には勝てない。

 奴は…………ウザルはそう答えると、蹴った僕の足を掴んで、力任せに地面に叩き付けた。


「おらおらおらぁあああああーーー!!!!


 何度も何度も地面に叩き付けては、投げ飛ばして、再び、僕の足を掴んで、叩き付けては投げ-------------

 奴は僕の戦意や気力を奪うのを楽しむかの如く一方的に痛ぶり、遊んだ。

 力は向こうの方が上。

 当然だ。

 だって向こうは、僕の兄以外は誰も敵う事はなかった魔族軍の傑物だ。

 鼻から勝ち目なんてなかった。

 下手にぶつかり合ったら、こちらが根負けする。

 そんな事は分かっていた。


「ぁぁ…………ぁ…………ぁぅ…………」

「ふんっ、所詮、口先だけの唯のガキか」

「あああああっ!!!!」


 執拗に、僕を痛ぶるウザル。

 何度も、殴る蹴る斬るといった暴力の限りを奴は尽くした。

 
「全く、つまらん期待をさせやがって…………。まぁ良い、お楽しみはまだ、残っているみたいだしなぁ…………」

「ひっ…………!!!」


 そして、興味を無くしたのか、ウザルは地面に覇気なく、倒れ伏す僕から視線を外して、邪悪な笑みを向けた。

 何とか、その方向へ顔を向けると、そこには、逃げ遅れたであろう子供達の姿があって-------------


「貴様を片付けた後は、あいつらで楽しませて貰うか」

「……………………はぁ?」


 段々と意識が薄れて行く中、ウザルが言い放った言葉を聞いて-------------僕の中で、何かが弾けた。

 は?

 楽しむだって?

 あんな年端もいかない子達で?


「……………………」

「あぁ? 何か、言ったか?」

「……………………ん…………」

「聞こえないっつってんだろ!? 何だって!?」




















「………………死んどけ……………」












「っ!?」

 
 ウザルの奴が突然、目の前から消えた。

 いや、俺が消した。

 立ち上がった俺の視線の先には、腹に大きな風穴を開けて、近くの民家へと突っ込んだウザルの姿があった。


「き、貴様、何を-------------」

「黙れ」

「なっ!? がっ!? ごっ!!!」


 とりあえず、殴った。

 殴って殴って、奴が吹っ飛ばされた先に先回りして、殴る。

 唯ひたすらに、そうした。

 そうして、奴が王都の頭上-------------数キロ離れた上空から踵落としを脳天に直撃させた。


「ぅぅぅぅうううあああああああーーーーーーー!!!!!!!!!」


 直撃させ、地面に叩き付けられて、数メートルものクレーターが出来た。


「ば、馬鹿な…………こんな、ありえん…………」

「現実だ…………このクソ野郎」


 そんで、寝転がる奴の頭を掴んで、膝蹴りを喰らわせた。

 喰らわせて、飛んで行った先、ウザルの奴が一方的にボコられるのを呆然と眺めていた魔族の連中へ命中。

 丁度良い。

 これで、



『ダイヤモンド・バースト』



 そう口にして、魔族共のいる方へと右の掌を向ける。

 すると、その掌に、無数の光が集まり、一つの巨大な光の球体として、形を成して行き-------------

 神々しい巨大な光が魔族共へと一直線に放たれた。


「ば、馬鹿なああああああーーーーー!!!!!!」


 光が止むと、光に飲まれた魔族共の姿のみが消え去っており、ウザルが使っていたと思しき二振りの剣が転がっていた。


「お、おい…………一体、何が…………」

「ウ、ウザル…………様…………?」

「ウザル様が…………やられた…………?」


 声がする方へ顔を向けると、信じられないものでも見るかのように、恐怖に歪んだ魔族共の姿が見える。

 そんな魔族共に対して僕は-------------


「失せろ」


 何の感情もない冷め切った口調で言ってやった。

 すると、一人の魔族が、剣を地面に落とすなり、逃げ出した。

 それに呼応するように、魔族という魔族が全速力で逃げ出し始めた。


「て、撤退!!!」

「撤退しろーー!!!」

「ウザル様がやられたああああ!!!」

「あんな化け物がいるなんて聞いてねぇよ!!!!」

「勝てる訳がねええええーーー!!!!」

「魔族共が逃げるぞ!!!!」

「追ええええ!!! 逃すなああああーー!!!!」


 逃げる魔族に対して、王都の騎士や冒険者が追撃を始める声が聞こえた。

 聞こえて-------------


「……………………!!」


 一瞬、クラっとして、思わず、膝を付いていた。

 どうやら、ウザルに受けたダメージが相当でかいらしい。

 此処で意識を失うのはまずい。

 非常にまずい。


「あ、あの…………大丈夫…………」

「くっ…………!!!」

「あ…………」


 何か、聞こえた気がしたが、何処かに隠れないと-------------!!!!

 何処か、何処か…………。


「!? あそこは…………」


 よし、ここ…………な…………ら…………?

 あれ?

 力が入らない?

 ま、まずい…………いしき…………が…………。
 

「おい!!! 大丈夫かい!!! しっかりおし!!!」
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