聖女は男で、反逆者で、救世主?

水先 冬菜

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第1章 救世の聖女

嵌(は)められた

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「おはようぅ~……。れいくぅん~……」

「おはようございます。レイフォード君」

 そんな感じで朝からあいさつをしてくる二人。

 聖女アスカ様とクリティシア姫は昨日の悲壮感もなく、清々しいくらい良い笑顔で、どこか吹っ切れた感じの雰囲気だ。

 俺は大きな口を開いて、欠伸あくびをしながらも「おはようさん」とあいさつを返す。

 正直、昨日の二人の変わりようが気になって碌に眠れなかったが--------あれは何だったんだ?

「そういえば、れいくぅん~……」

「何ですかねぇ~…………」

 また、いつもの勧誘ですか。

 と、思い、呆れながら、ため息混じりに返事を返したのだが--------

「これから私たちぃ~……。大急ぎでヘルスラット王国に向かう事にしたから、もう付きまとわったりしたりしないから安心してねぇ~……」

 と呑気に言って来たので、思わず「はあ?」と間の抜けた声を出してしまった。

 あれほど散々付きまとわっていた癖に、どういう心境の変化だ。

 隣にいるクリティシア姫も「今まで付きまとってすまなかった」と頭を下げてくるし……。

 何か野営もいつの間にか片付け終わってるし……。

 旅立つ準備も終えてるっぽいな…………。

 何か裏があったりするのか?

「と言うわけでそれじゃあねぇ~……!」

「て、おい、ちょっと!!」

 俺の制止を待たずに二人はヘルスラット王国の方角へと走り去っていった。

「いったい何だったんだ!?」

 俺は二人の不可解な行動に目を白黒させ、しばらく頭を抱えて考え込むのであった。

 その光景を面白そうに眺めている者にも気がつかずに--------


------------------------------------------

 それから数日が経ち、俺もどうにかこうにかヘルスラット王国の辺境の町にたどり着いた。

 道中、日頃溜まったストレスを発散するかのように、魔物を狩って、狩って、狩って、時折、武器や魔法の開発も行なって、それなりに聖女の力をうまくコントロールできるようになったとは思う。

 その証拠に女から男に自然に戻れるようにもなった。

 性格は変化したままだが…………。

 それでも、成長したと思う。

 とはいえ、あの二人の変化の謎が解けない事にはこの胸のモヤモヤが晴れなくて、結局は依頼を受ける訳なんだが…………。

 まあ、とりあえず、仕事だ仕事!

 俺は冒険者ギルドへ向かうとクエストボードの内容を吟味して、面白い依頼があったので、それを受ける事にした。

 特別クエスト。

 依頼者は匿名を希望。

 依頼内容は市街地に侵入した魔物の大群の討伐。

 報酬も割とかなり高めだ。

 どうにも怪しい依頼だが、憂さ晴らしにはもってこいだ。

 そう思って、依頼を受けた訳だが…………。

「…………められた……!」

 俺は依頼者に会った瞬間、思わず両手と膝を地面につけて崩れ落ちた。


 何故ならクエストの依頼者とは聖女アスカとクリティシア姫が率いている王都奪還を掲げたアルベール皇国とヘルスラット王国合同の討伐軍だったからだ。

 
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