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第1章 救世の聖女
監視魔法
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魔王の眷属を撃退してから数時間が経ち、俺は正直困った状況に陥っていた。
「「お願い致します!!! どうかお力をお貸しください!!!!」」
面倒ごとを嫌って、すぐさま野営の場所を変えたのだが、非常に邪魔な奴が二人付いてきた。
定番の土下座込みで--------
正直、あんまりにも鬱陶しいので、何度か実力行使で追い払ったりもしたが、ゾンビみたいに這いずってでも付いて来るもんだから恐いったらありゃしない。
思い返すだけでもゾッとする。
でも、これだけ必死だと、ある疑問が浮かぶ。
それはアルバート皇国の壊滅の話をしていた時の話だ。
実はあの時、アルバート皇国の帝都壊滅の話の前に、ある事を二人に問いただしてみた。
それは国王ニクラセイが俺を襲ったのは、俺が聖女である事に関連しているのか。
二人を護衛していた騎士が何故魔物化したのかの二つだ。
二人はその時、国王の命令だったから理由は私達も分からないとはぐらかされたが、少なからず反応はした。
明らかに何か知っているに違いない。
それもかなり重要な案件だ。
しかも、それには俺が関わっている案件なのだろうと察しがつく。
確信を持ってそう言えるのには、大きく分けて三つの理由がある。
一つ。
国王ニクラセイが人類の希望にして、いわば最終兵器たる聖女を借り出してまで俺を捕らえようとした事。
二つ。
帝都が壊滅した切迫の状況に対して、まず優先すべきは残存戦力との合流し、戦力を整える必要があるにも関わらず、優先順位を無視して、俺を仲間に引き入れる事に手を尽くしている事。
しかも、かなり必死。
三つ。
これはほとんど勘に近いのだが、何らかの理由で二人がその案件を話せない立場に立たされている感じがしてならないからだ。
その証拠とは言ってなんだが、俺の話題になると鬼気迫るという感じで決まってはぐらかしてくる。
国王も最初は偉そうにしていたが、途中から何か急に優しい口調で、えらくかしこまった感じがしていて気味が悪かったのだ。
「前にも言ったが他を当たれ…………」
「そこを何とか…………!!」
「くどい!」
「「……………………」」
うわぁ~…………二人揃って絶望し切った顔になっちゃってまぁ~…………。
というか、アスカ様。
あなた一応人類の希望なんですから、そんな顔しない方が良いと思いますよ~…………。
泣いたって無駄ですからねぇ~…………。
「…………分かりました…………」
クリティシア姫が嗚咽を堪えながら、おぼつかない足取りで俺の野営近くで組み立てて置いた簡易テントの中へと入っていった。
聖女アスカ様もそれにつられて入っていく。
その姿は敗残兵が如く、二人の表情はかなり暗い。
ま、俺の知った事ではないし、俺もさっさと眠るとするかな…………。
----------------で、何でこうなるかな?
俺が気持ちよく眠りにつこうとした時、念のため作っておいたとある魔法が発動したのを感じて起きてみると、視界にある二人の姿が見える。
『もうこれ以上の失敗は許されないわ。何とかして彼を連れて行かなくては…………』
『けどぉ~…………。どうするのぉ~……? ただでさえ、魔王の眷属を秒殺しちゃうのにぃ~…………。私達には、どうこうする事出来ないと思うんだけどぉ~…………』
『そこを何とかするしかありません。これは世界の命運を左右する問題なのですよ!』
監視魔法。
指定した場所へ自分自身の聴覚や視覚を飛ばして、周りの状況を見たり聞いたりする魔法で、主に諜報の面で俺がよく利用している魔法だ。
というか、便利なので作った。
特に、女湯をのぞく時にもべん----------------こほん!
それはそれとして…………。
どうやら、まだ二人は俺の事を諦めていないようだな…………。
それにしても、世界の命運って大げさな…………。
『そうは言っても私一度失敗してるしなあ~…………』
聖女アスカ様はもう心が折れかけているみたいだ。
『一度や二度の失敗がなんです! きっと何か方法がまだあるはず…………』
一方のクリティシア姫はまだ諦めきれていない感じか…………。
『そうでないとあの方に見放されてしまう…………』
「んん…………?」
あの方…………?
何か面白い事言ってんな…………。
多分、そのあの方ってのが、全ての謎を解く鍵だ。
『ちょっ……! リティ、こんな場所であの方の話をしては駄目よ!!』
聖女様の焦りようからして、こりゃ確定かな?
そのあの方って奴が、何らかの理由で、俺を連れていくよう国王達に指示を出し、どういう訳か地位や権力の頂点に立つ聖女様さえ逆らえないどころか。
恐れている?
存在のようだ。
ちょっと興味が出て来たな…………。
どうせなら、もっと口を滑らしてくれないかねぇ。
『このままじゃ、私もあなたも国の人々も何もかも失うのよ!!! そんな事を言っている状況じゃないわ!!!!!!!』
そう思っていると、クリティシア姫が声を荒げて反論する。
本当に後がないみたいだな…………。
相当追い詰められてる。
聖女が希少であったとしても、男から女になる変人にどれほどの価値があるんだか…………。
『私にもそれは分かっているわ。けれど、リティ、あなたはアルバート皇国の王女。どんな状況化でも取り乱す事は許さないわ』
『けど…………!』
『けどじゃない! 気持ちは分かる。私だって悔しい。でも、私達はまだ負けた訳じゃない。帝都は残念な事になっちゃったけど、幸い私を含めた聖女達は無事に帝都から脱出できたし、味方だって同盟国でもあるヘルスラット王国で再起を図ろうと軍備を整えようとしている。レイくんが例え仲間になってくれなくても、希望の芽は潰えちゃいない。
だから、ね……。一人でそんなに背追い込まなくてもいいんだよ。一緒にがんばろ……!』
『…………アスカ…………』
「……………………」
感動的な場面なのだろうが、鬱陶しく見えるのは俺の心が腐っているからだろうか……………。
それとも歪みきってしまっている所為なのか…………。
どっちしろクズなのだが…………。
そう思っていると二人の様子が急に変わった。
二人揃って天を見上げ、そして、祈りを捧げるかのように両手を合わせて、目を閉じた。
『『全ては御身の御心のままに…………』』
今、何が起きた……!?
さっきまで悲壮感を漂わせていた雰囲気が一変、何故か二人はまるで救われたかのような清々しい笑顔で、静かにテントの中で寝息を立て始めた。
あまりにも二人の雰囲気の変わりように、理解の追いつかない俺は当然困惑した。
今、何が起きた?
あの二人の変わりようは一体なんだ?
まさか、あの二人が言っていたあの方とかいう奴が関わっているのか?
ぐるぐると考え続けたが、結局朝になるまで答えはまとまらず、俺は寝れない夜を過ごすのだった。
「「お願い致します!!! どうかお力をお貸しください!!!!」」
面倒ごとを嫌って、すぐさま野営の場所を変えたのだが、非常に邪魔な奴が二人付いてきた。
定番の土下座込みで--------
正直、あんまりにも鬱陶しいので、何度か実力行使で追い払ったりもしたが、ゾンビみたいに這いずってでも付いて来るもんだから恐いったらありゃしない。
思い返すだけでもゾッとする。
でも、これだけ必死だと、ある疑問が浮かぶ。
それはアルバート皇国の壊滅の話をしていた時の話だ。
実はあの時、アルバート皇国の帝都壊滅の話の前に、ある事を二人に問いただしてみた。
それは国王ニクラセイが俺を襲ったのは、俺が聖女である事に関連しているのか。
二人を護衛していた騎士が何故魔物化したのかの二つだ。
二人はその時、国王の命令だったから理由は私達も分からないとはぐらかされたが、少なからず反応はした。
明らかに何か知っているに違いない。
それもかなり重要な案件だ。
しかも、それには俺が関わっている案件なのだろうと察しがつく。
確信を持ってそう言えるのには、大きく分けて三つの理由がある。
一つ。
国王ニクラセイが人類の希望にして、いわば最終兵器たる聖女を借り出してまで俺を捕らえようとした事。
二つ。
帝都が壊滅した切迫の状況に対して、まず優先すべきは残存戦力との合流し、戦力を整える必要があるにも関わらず、優先順位を無視して、俺を仲間に引き入れる事に手を尽くしている事。
しかも、かなり必死。
三つ。
これはほとんど勘に近いのだが、何らかの理由で二人がその案件を話せない立場に立たされている感じがしてならないからだ。
その証拠とは言ってなんだが、俺の話題になると鬼気迫るという感じで決まってはぐらかしてくる。
国王も最初は偉そうにしていたが、途中から何か急に優しい口調で、えらくかしこまった感じがしていて気味が悪かったのだ。
「前にも言ったが他を当たれ…………」
「そこを何とか…………!!」
「くどい!」
「「……………………」」
うわぁ~…………二人揃って絶望し切った顔になっちゃってまぁ~…………。
というか、アスカ様。
あなた一応人類の希望なんですから、そんな顔しない方が良いと思いますよ~…………。
泣いたって無駄ですからねぇ~…………。
「…………分かりました…………」
クリティシア姫が嗚咽を堪えながら、おぼつかない足取りで俺の野営近くで組み立てて置いた簡易テントの中へと入っていった。
聖女アスカ様もそれにつられて入っていく。
その姿は敗残兵が如く、二人の表情はかなり暗い。
ま、俺の知った事ではないし、俺もさっさと眠るとするかな…………。
----------------で、何でこうなるかな?
俺が気持ちよく眠りにつこうとした時、念のため作っておいたとある魔法が発動したのを感じて起きてみると、視界にある二人の姿が見える。
『もうこれ以上の失敗は許されないわ。何とかして彼を連れて行かなくては…………』
『けどぉ~…………。どうするのぉ~……? ただでさえ、魔王の眷属を秒殺しちゃうのにぃ~…………。私達には、どうこうする事出来ないと思うんだけどぉ~…………』
『そこを何とかするしかありません。これは世界の命運を左右する問題なのですよ!』
監視魔法。
指定した場所へ自分自身の聴覚や視覚を飛ばして、周りの状況を見たり聞いたりする魔法で、主に諜報の面で俺がよく利用している魔法だ。
というか、便利なので作った。
特に、女湯をのぞく時にもべん----------------こほん!
それはそれとして…………。
どうやら、まだ二人は俺の事を諦めていないようだな…………。
それにしても、世界の命運って大げさな…………。
『そうは言っても私一度失敗してるしなあ~…………』
聖女アスカ様はもう心が折れかけているみたいだ。
『一度や二度の失敗がなんです! きっと何か方法がまだあるはず…………』
一方のクリティシア姫はまだ諦めきれていない感じか…………。
『そうでないとあの方に見放されてしまう…………』
「んん…………?」
あの方…………?
何か面白い事言ってんな…………。
多分、そのあの方ってのが、全ての謎を解く鍵だ。
『ちょっ……! リティ、こんな場所であの方の話をしては駄目よ!!』
聖女様の焦りようからして、こりゃ確定かな?
そのあの方って奴が、何らかの理由で、俺を連れていくよう国王達に指示を出し、どういう訳か地位や権力の頂点に立つ聖女様さえ逆らえないどころか。
恐れている?
存在のようだ。
ちょっと興味が出て来たな…………。
どうせなら、もっと口を滑らしてくれないかねぇ。
『このままじゃ、私もあなたも国の人々も何もかも失うのよ!!! そんな事を言っている状況じゃないわ!!!!!!!』
そう思っていると、クリティシア姫が声を荒げて反論する。
本当に後がないみたいだな…………。
相当追い詰められてる。
聖女が希少であったとしても、男から女になる変人にどれほどの価値があるんだか…………。
『私にもそれは分かっているわ。けれど、リティ、あなたはアルバート皇国の王女。どんな状況化でも取り乱す事は許さないわ』
『けど…………!』
『けどじゃない! 気持ちは分かる。私だって悔しい。でも、私達はまだ負けた訳じゃない。帝都は残念な事になっちゃったけど、幸い私を含めた聖女達は無事に帝都から脱出できたし、味方だって同盟国でもあるヘルスラット王国で再起を図ろうと軍備を整えようとしている。レイくんが例え仲間になってくれなくても、希望の芽は潰えちゃいない。
だから、ね……。一人でそんなに背追い込まなくてもいいんだよ。一緒にがんばろ……!』
『…………アスカ…………』
「……………………」
感動的な場面なのだろうが、鬱陶しく見えるのは俺の心が腐っているからだろうか……………。
それとも歪みきってしまっている所為なのか…………。
どっちしろクズなのだが…………。
そう思っていると二人の様子が急に変わった。
二人揃って天を見上げ、そして、祈りを捧げるかのように両手を合わせて、目を閉じた。
『『全ては御身の御心のままに…………』』
今、何が起きた……!?
さっきまで悲壮感を漂わせていた雰囲気が一変、何故か二人はまるで救われたかのような清々しい笑顔で、静かにテントの中で寝息を立て始めた。
あまりにも二人の雰囲気の変わりように、理解の追いつかない俺は当然困惑した。
今、何が起きた?
あの二人の変わりようは一体なんだ?
まさか、あの二人が言っていたあの方とかいう奴が関わっているのか?
ぐるぐると考え続けたが、結局朝になるまで答えはまとまらず、俺は寝れない夜を過ごすのだった。
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