史上最強聖女の勧誘生活〜魔王を倒してから、しつこく勧誘されまくりで迷惑してます〜

聖女編

不愉快な相手

「申し訳ないんですが…………今、結婚って、言いました……？」

「う、うむ…………」

「……………………」

　結婚……？

　あの兄さんが…………結婚…………。

　ちょっと待て、そんなん初耳なんだけど……？

　っていうか、相手って……………………まさか…………。

「ちなみに……………………お相手は……？」

「…………シズカだ…………」

「シズカ…………ですか…………」

　自然と俺の声のトーンは暗くなった。

　予想通りとはいえ、かなり不快な奴が出て来やがったな、おい！

　何で、あんな奴が兄さんと結婚するんだよ！？

「あぁ…………。

　お前の言いたい事はよく分かる…………。

　けどな、それ以上は言ってくれるなよ？

　お前がシズカを…………引いてはあそこを許せないのは…………。

　まあ、俺も最初はよりを戻すつもりも、許す気もなかったからな…………」

「……………………」

　「俺も人の事は言えねえが…………ただ、これだけははっきりと言える。

　俺はな…………やっぱり、シズカ以上に惚れられる女はいねえよ…………。

　例えそれが、俺の未来を奪った相手だとしても、な…………」

「……………………そう、ですか…………」

　兄さんの瞳め…………こりゃあ、本気みたいだな…………。

　色々と複雑で、思う所はある。

　正直、あんな奴と兄さんが結婚するなんて反対だ。

　はっきり言って、あの女には言ってやりたい事が腐る程あるからな…………。

　だが、それは俺がとやかくいう問題ではない。

　兄さんが覚悟を決めて、惚れた女と所帯を持つなら弟としてはそれを祝福すべき、なのだろう。

　だけど----------------

「悪いけど、俺は出席を辞退させて貰うからね…………」

　どうにも、あの女だけは祝福する事が出来ない。

　だから、俺は兄さんの結婚式には死んでも行かない。

　でも、兄さんは----------------

「おう！　分かってるって！」

　俺がレシートを手にして席を立つと、最初から予想していたかのように、そう返事をする兄さん。

　ほんと、俺の事をよく分かっていらっしゃる。

　そういえば、あの時もこんな感じだったな…………。