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第四章 強欲がもたらす願い

洗礼-2

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「…………という訳だ…………」


「ごめんなさい…………。

 話がいまいち飲み込めないんだけど…………」


 こんなに分かり易く説明したのに、まだ分からないのか…………。


『つまりはですね。


 《洗礼》で勇者の浄化の力を引き出して、そこのバカが、その浄化の力を広範囲に拡散する事で、擬態したスライムの能力を封じて倒そうって計画です』


「なるほど…………」


 な、何で、サキネの答えなら理解出来るんだ!?


 ちょっと、ショックだ…………。


「ま、まあ…………そういう訳だから…………。


 よろしくな…………」


 後は聖女もいるし、俺は別の準備かあるため、部屋を後にする。


 すると、部屋を出る前に、案内をしてくれたあの男性が俺の肩を掴んで来た。


 何だろうと思って振り返ると-------------


「申し訳ありませんが…………。


 壊れた扉の修繕費は払ってくださいね」


 すんません!!


 すっかり、忘れてました!!!


------------------------------------------


「くそうっ!!


 余計な出費が出ちまったぜっ!!!」


 最近、色々と問題が多くて、懐が心許なくなって来たっていうのに…………。


 やっぱり、世の中は理不尽だ!!


 さて、嘆いてばかりじゃなく、仕事をしますか!!


 仕事!!!


 久方ぶりに俺の生産スキル《創造》の出番なんだ!!


 気合を入れろっ!?


「…………と言っても、イメージが浮かぶまで使えないんだが…………」


 俺のチートな生産スキル《創造》はイメージしたものを現実空間に生み出すスキルだ。


 このスキルはイメージが明確な程、より精密で、強力な魔道具が誕生する。


 そして、今回、俺がイメージするのは、勇者様が《洗礼》で身に付けるであろう《浄化能力》を、どう効率良く拡散させるかが問題になって来る。


 勇者用に用意されているパワードスーツに組み込むのが、手っ取り早く済むのだが…………。


 勇者様の機体は、他の三機のパワードスーツと違い、ロールアウトさせるためにの起動が絶対条件だ。


 その術が今もない以上、それを補うだけの何かが必要だ。


 だが、それが一向に思い付かない。


 勇者様には、勇者の象徴にして、人類の希望たるあの聖剣がある。


 あの聖剣は何だかんだ言って、絶妙なバランスを保つ、とても繊細な武器だ。


 ちょっとした事で、すぐに不調を来たして、使い物にならなくなる可能性が高い。


 一度、勇者様に聖剣を調べさせて貰ったが、下手に手を加えると危険な事が良く分かった。


 元々、前に勇者に与えたスキル《勇者の心ブレイブ・ハート》は、どういう訳か、過去の勇者によって、切り離されたスキルを元に戻しただけだし…………。


 ほんと、どうしたもんかね…………。


「ん…………?」


 何か、自棄に視線を感じるな…………。


 そう思った時だった。


「ねえねえ、お兄さん!」


 突然、四~五歳くらいの女の子に服を引っ張られた。


「お兄さんって、もしかして、あの悪魔を倒してくれた英雄さん!?」


 花満開な元気いっぱいの笑顔に、思わず凍り付く俺。


 すっかり忘れていたが…………。


 そういえば、俺、この都市だと英雄扱いされていたんだった。


 その後は、言わずとも、俺の事を知っているであろう町の人々から、逃げ回る羽目になったのだった。
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