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第三章 際限なき悪意
油断大敵
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「国王陛下って言っても、この程度か…………。
つまらないなぁ~…………」
大男が国王の胸を巨大な一本の爪で背後から貫くと、子供のような声音で退屈そうに呟く。
「まあ、これはこれで、彼の役には立つし…………。
問題ないか……?」
大男は国王の身体から爪を抜いて、そこら辺に国王の死体を放り投げた。
「ん……?」
そして、ある違和感に気付いた時、その死体が受け身を取って、大男の足にしがみ付いて来た。
それだけではない。
殺した筈の騎士達の死体も、国王同様に腕や腰やらと国王と同様にしがみ付いて来る。
「な、何だよこれ!?」
大男が足にしがみ付いた国王と目が合い、その目が赤黒く染まり、奇妙な機械音が鳴り響くと----------------大男を巻き込んで爆発した。
------------------------------------------
同時刻----------------
国王の執務室が大爆発した頃、その様子を遠目から眺めている者がいた。
「おお、すごい事になっているな…………」
「そうですね…………」
王宮を少し離れた森の中、木の上からバイザーの望遠機能で執務室の様子を伺っていた剣聖と聖女は、地面に現れた転移の魔法陣を確認するとゆっくりと降りて行く。
「ご無事ですか……? 陛下…………」
聖女が声を掛けると、その男…………国王は顔を上げた。
「ああ、大丈夫だ。
危機一髪ではあったが…………」
よくよく見ると、国王の背後には、あの大男に殺された筈の騎士達の姿もあった。
聖女は皆に、治癒魔法を掛け、一人一人介抱して行く。
「それにしても、そいつの能力は凄いもんですね。
陛下」
「…………全くだ…………」
周りを警戒しながら、剣聖は国王へと語り掛ける。
国王はそれに頷くと、首元に掛けてあったペンダントをソッと手で救い上げて、ジッと見つめた。
それはライハが国王へ渡した魔道具だ。
魔道具の名称は《スケープ・ゴート》
常時発動型の魔道具にして、所有者と所有者と所有者と関わりのある人物を一日一回死を免れる伝説級の魔道具だ。
しかも、その死を与えた怨敵に、苛烈な制裁を与える事が出来る上、特定の人物……………………勇者や剣聖などの戦闘力の高い人物の元へと転移する事さえ出来る。
何とも、ぶっ飛んだ品物だ。
そんなありえない魔道具を作る辺り、ライハの異常性を痛感する国王。
あの馬鹿と違って、敵対しなくてよかったと改めて思う。
「それにしても、こうも彼の想定通りになるとはな…………」
そして、我々が考え付かないであろう敵の正体をいち早く掴んで、指示を出しておく辺り、抜け目がない。
もし、このまま、彼の想定通りに事が進んだとすれば…………。
「見つけたよ…………」
転移魔法で、奴が我々を追って来る。
ここまで来ると…………もう彼は、神か何かなのかとさえ思えて来た。
自然と頬が緩む国王。
「さて、剣聖よ。
次の段階へと移ろうかの…………」
「了解致しました!
行くぞ!?
グレン!!」
『あいよ!!
マスター!!!』
紅の鎧を身に纏う剣聖が国王の前に出ると、背に背負う大剣を抜き、構える。
「さて、国王陛下にあだなす不届き者が!?
この俺が叩き切ってやるよ!!」
「…………面白い…………」
あちこち、ローブが焼け焦げた大男の頬が邪悪に歪む。
剣聖が駆け出すと同時に、大男も剣聖へと迫る。
剣聖の大剣と、大男の爪が激しく何度も何度もぶつかり合い、その衝撃で辺り一面に爆風が吹き荒れる。
「シズク!」
「分かっております!」
国王と騎士をバリアフィールドで囲んで守る聖女は、今も目の前で激しい戦いを繰り広げる剣聖の顔を見て思った。
『また、悪い癖が出た』と…………。
つまらないなぁ~…………」
大男が国王の胸を巨大な一本の爪で背後から貫くと、子供のような声音で退屈そうに呟く。
「まあ、これはこれで、彼の役には立つし…………。
問題ないか……?」
大男は国王の身体から爪を抜いて、そこら辺に国王の死体を放り投げた。
「ん……?」
そして、ある違和感に気付いた時、その死体が受け身を取って、大男の足にしがみ付いて来た。
それだけではない。
殺した筈の騎士達の死体も、国王同様に腕や腰やらと国王と同様にしがみ付いて来る。
「な、何だよこれ!?」
大男が足にしがみ付いた国王と目が合い、その目が赤黒く染まり、奇妙な機械音が鳴り響くと----------------大男を巻き込んで爆発した。
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同時刻----------------
国王の執務室が大爆発した頃、その様子を遠目から眺めている者がいた。
「おお、すごい事になっているな…………」
「そうですね…………」
王宮を少し離れた森の中、木の上からバイザーの望遠機能で執務室の様子を伺っていた剣聖と聖女は、地面に現れた転移の魔法陣を確認するとゆっくりと降りて行く。
「ご無事ですか……? 陛下…………」
聖女が声を掛けると、その男…………国王は顔を上げた。
「ああ、大丈夫だ。
危機一髪ではあったが…………」
よくよく見ると、国王の背後には、あの大男に殺された筈の騎士達の姿もあった。
聖女は皆に、治癒魔法を掛け、一人一人介抱して行く。
「それにしても、そいつの能力は凄いもんですね。
陛下」
「…………全くだ…………」
周りを警戒しながら、剣聖は国王へと語り掛ける。
国王はそれに頷くと、首元に掛けてあったペンダントをソッと手で救い上げて、ジッと見つめた。
それはライハが国王へ渡した魔道具だ。
魔道具の名称は《スケープ・ゴート》
常時発動型の魔道具にして、所有者と所有者と所有者と関わりのある人物を一日一回死を免れる伝説級の魔道具だ。
しかも、その死を与えた怨敵に、苛烈な制裁を与える事が出来る上、特定の人物……………………勇者や剣聖などの戦闘力の高い人物の元へと転移する事さえ出来る。
何とも、ぶっ飛んだ品物だ。
そんなありえない魔道具を作る辺り、ライハの異常性を痛感する国王。
あの馬鹿と違って、敵対しなくてよかったと改めて思う。
「それにしても、こうも彼の想定通りになるとはな…………」
そして、我々が考え付かないであろう敵の正体をいち早く掴んで、指示を出しておく辺り、抜け目がない。
もし、このまま、彼の想定通りに事が進んだとすれば…………。
「見つけたよ…………」
転移魔法で、奴が我々を追って来る。
ここまで来ると…………もう彼は、神か何かなのかとさえ思えて来た。
自然と頬が緩む国王。
「さて、剣聖よ。
次の段階へと移ろうかの…………」
「了解致しました!
行くぞ!?
グレン!!」
『あいよ!!
マスター!!!』
紅の鎧を身に纏う剣聖が国王の前に出ると、背に背負う大剣を抜き、構える。
「さて、国王陛下にあだなす不届き者が!?
この俺が叩き切ってやるよ!!」
「…………面白い…………」
あちこち、ローブが焼け焦げた大男の頬が邪悪に歪む。
剣聖が駆け出すと同時に、大男も剣聖へと迫る。
剣聖の大剣と、大男の爪が激しく何度も何度もぶつかり合い、その衝撃で辺り一面に爆風が吹き荒れる。
「シズク!」
「分かっております!」
国王と騎士をバリアフィールドで囲んで守る聖女は、今も目の前で激しい戦いを繰り広げる剣聖の顔を見て思った。
『また、悪い癖が出た』と…………。
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