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第三章 際限なき悪意

馬鹿の最後

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「違う…………違う…………。

 こんなのは可笑しい…………!」


 王宮の地下深く------------


 反王政派の連中が収容されている地下牢獄にて、焦点を失って、今もかすれかすれに呟く。


 現実を受け入れない馬鹿がいた。


 先日、ライハに返り討ちにされ、左腕を斬り落とされ、廃嫡になった。


 あの大馬鹿青年だ。


 実はあの後、ライハにトドメをさされず、目の前で刃を寸止めされて…………。


 もれなく、ズボンに大きな染みを残して、白目を剥いて気絶した青年。


 鎖に繋がれ、投獄されてから様々な尋問を受けて、身も心もボロボロになった青年は、光を失くして、壊れたレコードのように、ずっと呟き続けている。


 何度か、脱獄も試みたようだが…………。


 それも、あの国王の演説の後だったため、デリヘラの呪いが当然、投獄されている反王政派の者達にも適応されていた。


 そして、青年の横に立っていたジョージと呼ばれていた執事が、青年の前に無残に放置されていた。


 彼は、これから自分の身に起きるであろう未来に怯えて、脱獄を試み……………………そのまま、デリヘラの呪いによって、青年の前で悲惨な死を遂げた。


 それは、この牢獄に収容された面々にすぐ様伝わり、今では誰も脱獄などせず、大人しく自身の死の時を待ちわびている者が多い。


 そんな中で、青年だけはまだ諦めていなかった。


 恨み言を毎日のように呟き、どうすれば、また王の座へと戻れるのか…………。


 それだけを考え続けて……………………結局、何も出来ずに弱々しく呟き続ける日々。


『力が欲しい……?』


 そんな青年に、悪魔が囁いた。


 虚な眼で、顔を上げると、青年の前に誰か立っていた。


 目が霞んで、よく見えないが…………。


 その人物が青年の頭を掴むと、徐々に視界がクリアになっていき------------


 その人物の顔が見えた瞬間-----------


 青年の意識が途切れた。


 青年が最後に見たのは、狂気に満ちた目で歪に笑う大男の姿だった。

 
 
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