105 / 144
第三章 際限なき悪意
第一段階
しおりを挟む
勇者達からの説教が終わり、憔悴していた俺は、端末に届いた知らせで息を吹き返した。
「よしっ!!」
「どうかしたんですか……?」
突然、ガッツポーズを取る俺に、不思議そうに小首を傾げ、問い掛ける聖女。
こいつは都合が良い!
「すまんが、聖女! サキネを貸してくれ!」
「え? ええ、構いませんけど…………」
そう言って、左手の中指から、サキネの本体である指輪を手渡した。
俺はそれを聖女から受け取ると、腕輪の転移魔道具を使って、工房へと戻る。
そして、駆け足で工房の奥へと進み、そこにあるポッドの中身を確認する。
よしよし!
順調に進んでる。
「サキネ。
システムリリース。
擬似人格プロセスを起動。
ベータプログラムと同時実行開始」
『了解致しました。
擬似人格プロセス起動を承認。
人格プログラムは私のデータをベースに構築……………………完了。
第二段階へ移行してもよろしいでしょうか』
「許可する」
『承認致しました。
擬似人格プログラムのコピーを開始。
制作中の機体に実装が開始されました。
それにより、所定の時間を大幅に超えてしまう可能性がありますが、問題はありませんか?』
「問題はない。
全てを実装してくれ。
それと同時に武装の方にも、例のプログラムを導入しろ」
『了解。
全プロセス確認。
正常に稼働中。
全工程終了まで、残り七時間三十五分』
結構、かかるな…………。
一応、撃退したとはいえ、奴らがまた攻め込んで来る可能性はまだある。
そこは勇者達にカバーして貰うしかないよな…………。
こいつらさえ、完成すれば、問題が大幅に減って、色々と専念出来る上、勇者達にも好都合な筈だ。
だが、それでも、あいつが…………死霊魔導師のアレクセイが乗り込んで来たら、対処は一気に難しくなる。
本物か、偽物かはまだ分からないが…………。
最悪のシナリオは想定していて、損はない。
「おっと、そうだ…………。
こいつを忘れる所だった」
例の雛形のカードデバイスを取り出して、機器に差し込み、サキネのバックアップを借りながら、新たなデータを入力する。
そして、カードデバイスを抜き取り、そのまま、懐にしまおうとして------------
『本当にそれで良いの……?』
--------手が止まる。
否、正確には止められた、だ…………。
俺の手に添えるようにして、カードデバイスに触れるその手は見覚えのある一柱の女神のもの。
顔は見えないが、どんな表情をしているのかは手に取るように分かる。
「あぁ、俺はそれで構わない。
あんたがどんなに止めようと、俺はあいつの夢を叶える。
それ以外、何をして良いのかも分からないしな…………。
第一…………あんただって、それを望んでいるんだろう……?」
『……………………』
彼女は何も答えなかったが、気持ちは痛い程、伝わって来る。
もしあいつが、この計画を起こさなければ、また違った未来があったのかもしれない。
最近、よくそう思う事がある。
久方ぶりに、あいつの顔を見ちまったからか……?
そこは、よくは分からないが、ただ一つ言える事は、こいつらを作り上げる事に、俺は生き甲斐を感じている。
それだけは、はっきりと言える。
例え、誰が否定しようとも、俺はあいつの夢を完成させる。
そう決意して、俺はここにいる。
だから、あんたにも、俺を止める事は出来ないぜ…………。
『…………次はないからね…………』
ソッと離される小さな手。
その瞬間、彼女の気配が消え去った。
「あぁ…………。
分かっているよ…………。
でも、これだけはどうしてもやり遂げたいんだ。
だって、俺は……………………あんたよりも、あいつの事が好きだったんだから…………」
「よしっ!!」
「どうかしたんですか……?」
突然、ガッツポーズを取る俺に、不思議そうに小首を傾げ、問い掛ける聖女。
こいつは都合が良い!
「すまんが、聖女! サキネを貸してくれ!」
「え? ええ、構いませんけど…………」
そう言って、左手の中指から、サキネの本体である指輪を手渡した。
俺はそれを聖女から受け取ると、腕輪の転移魔道具を使って、工房へと戻る。
そして、駆け足で工房の奥へと進み、そこにあるポッドの中身を確認する。
よしよし!
順調に進んでる。
「サキネ。
システムリリース。
擬似人格プロセスを起動。
ベータプログラムと同時実行開始」
『了解致しました。
擬似人格プロセス起動を承認。
人格プログラムは私のデータをベースに構築……………………完了。
第二段階へ移行してもよろしいでしょうか』
「許可する」
『承認致しました。
擬似人格プログラムのコピーを開始。
制作中の機体に実装が開始されました。
それにより、所定の時間を大幅に超えてしまう可能性がありますが、問題はありませんか?』
「問題はない。
全てを実装してくれ。
それと同時に武装の方にも、例のプログラムを導入しろ」
『了解。
全プロセス確認。
正常に稼働中。
全工程終了まで、残り七時間三十五分』
結構、かかるな…………。
一応、撃退したとはいえ、奴らがまた攻め込んで来る可能性はまだある。
そこは勇者達にカバーして貰うしかないよな…………。
こいつらさえ、完成すれば、問題が大幅に減って、色々と専念出来る上、勇者達にも好都合な筈だ。
だが、それでも、あいつが…………死霊魔導師のアレクセイが乗り込んで来たら、対処は一気に難しくなる。
本物か、偽物かはまだ分からないが…………。
最悪のシナリオは想定していて、損はない。
「おっと、そうだ…………。
こいつを忘れる所だった」
例の雛形のカードデバイスを取り出して、機器に差し込み、サキネのバックアップを借りながら、新たなデータを入力する。
そして、カードデバイスを抜き取り、そのまま、懐にしまおうとして------------
『本当にそれで良いの……?』
--------手が止まる。
否、正確には止められた、だ…………。
俺の手に添えるようにして、カードデバイスに触れるその手は見覚えのある一柱の女神のもの。
顔は見えないが、どんな表情をしているのかは手に取るように分かる。
「あぁ、俺はそれで構わない。
あんたがどんなに止めようと、俺はあいつの夢を叶える。
それ以外、何をして良いのかも分からないしな…………。
第一…………あんただって、それを望んでいるんだろう……?」
『……………………』
彼女は何も答えなかったが、気持ちは痛い程、伝わって来る。
もしあいつが、この計画を起こさなければ、また違った未来があったのかもしれない。
最近、よくそう思う事がある。
久方ぶりに、あいつの顔を見ちまったからか……?
そこは、よくは分からないが、ただ一つ言える事は、こいつらを作り上げる事に、俺は生き甲斐を感じている。
それだけは、はっきりと言える。
例え、誰が否定しようとも、俺はあいつの夢を完成させる。
そう決意して、俺はここにいる。
だから、あんたにも、俺を止める事は出来ないぜ…………。
『…………次はないからね…………』
ソッと離される小さな手。
その瞬間、彼女の気配が消え去った。
「あぁ…………。
分かっているよ…………。
でも、これだけはどうしてもやり遂げたいんだ。
だって、俺は……………………あんたよりも、あいつの事が好きだったんだから…………」
0
お気に入りに追加
1,055
あなたにおすすめの小説
26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。
克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー。男はずっと我慢の人生を歩んできた。先天的なファロー四徴症という心疾患によって、物心つく前に大手術をしなければいけなかった。手術は成功したものの、術後の遺残症や続発症により厳しい運動制限や生活習慣制限を課せられる人生だった。激しい運動どころか、体育の授業すら見学するしかなかった。大好きな犬や猫を飼いたくても、「人獣共通感染症」や怪我が怖くてペットが飼えなかった。その分勉強に打ち込み、色々な資格を散り、知識も蓄えることはできた。それでも、自分が本当に欲しいものは全て諦めなければいいけない人生だった。だが、気が付けば異世界に転生していた。代償のような異世界の人生を思いっきり楽しもうと考えながら7年の月日が過ぎて……
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
一家処刑?!まっぴら御免ですわ! ~悪役令嬢(予定)の娘と意地悪(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。
この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。
最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!!
悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる