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第三章 際限なき悪意

夢のために…………

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 夢を見た。


 それはそれは懐かしい。

 俺にとって、大切で、忘れ難い日の夢だ。


 俺はこの世界で、生まれて早々に両親を盗賊に殺された。


 そして、盗賊共に連れ去られて、奴隷として売り渡されそうになった時、俺の目の前にが現れた。


「おう! 大丈夫か!? 坊主!」

 豪快に笑うそいつの名は、アレクセイ・ニコラビッチ。

 俺の育て親にして、親友と呼べる唯一無二の存在だった。

 あいつは瞬く間に、盗賊共を瞬殺し、俺を助け出すと、何かと理由を付けて、俺と一緒に暮らし始めた。

 何度か、あいつと暮らす内に、何度も死にそうな目に遭って…………。


 一度、ドラゴンの討伐とか、ありえない仕事を持って来て、死にかけた事もある。

 確か、その時に俺は前世で、日本に住んでいた頃の記憶を取り戻したんだっけか…………。


 ロボットアニメが好きで、プログラム関係の仕事をしていた頃の記憶が思い起こされて…………。

 転生者と知ったあいつは、自分も転生者だと言って、日本で過ごした事を語り合ったけな…………。


 そして、俺のロボットの知識と自分の魔法知識を合わせて、あの計画----------------《ヴァルキリー計画》を作ろうとか、夢物語も良いような妄想を堂々と語っていた。


 最初は呆れたが、正義感の強いあいつは、一切の妥協をする事なく、計画を推し進めて、気付けば、実現可能なレベルにまで、消化されていた。


 特に、俺のイメージ次第で、何もないところから物を生み出す。


 生産スキル《創造》は、その計画には必要不可欠な能力だったため、拝み倒す形で渋々あいつに従った。


 あいつを手伝う内、気付けば、俺もその計画にどっぷり入り込み、漸く、ロールアウトも終えて、稼働テストを行おうとして--------


 あの悲劇が起きた。


 過去の魔王の魂に支配されたあいつを、俺は稼働テスト前の《ヴァルキリー》で殺した。


 子供達を救うためとはいえ、あいつの夢の力で、俺はあいつをこの手で殺した。


 それを受け入れられなくて…………。

 その事を忘れようと現実逃避するように、研究に没頭した。

 そして、いつしか、あいつを殺す原因になった魔王を恨むようになり、俺専用に改造した《ヴァルキリー》で魔王城に乗り込み、怒りに任せて蹂躙した。


 それでも、気が晴れなかった俺は失意の中、偶然、目に入った辺境の町で最下級の冒険者として成り済ましながら、研究にまた没頭し始めた。


 それぐらいしか、あいつに贖罪出来る方法はなかったからだ。

 
 勇者と共に魔王を倒す。


 それが、あいつが…………親友が夢見たもの。


 なら、せめて、あいつの想いを形だけだとしても残してやりたかった。


 だから、俺は一生をかけてあいつの夢を叶える。


 例え、それで、俺の命が尽きる事になっても…………。


 ふと、光が当たりを包むと、俺は療養している王宮の一室で目が覚めた。

「ん……?」


 起き上がると、何故か勇者御一行が俺の眠るベットの上で突っ伏しながら寝ていた。

 何があったんだと頭を捻っていると…………。


「あれ? ライハさん」

 俺の右手を掴んでいた聖女が目を擦りながら、顔をあげた。


「おう…………」

 とりあえず、手を挙げて答えると…………。


 その瞬間----------------何故か、キレの良いパンチが俺の顔面に炸裂。

 そのまま、ガラスを突き破って、ベランダの床に叩き付けられるのだった。
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