最下級冒険者は英雄である事をひた隠す 〜生産スキルで、メカチート生産?〜

水先 冬菜

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第三章 際限なき悪意

狂演の幕開け

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「おうおうっ!!

 やっているねええええっ!!!」

 バルス帝国の首都。

 その王城の天辺で、城下町の様子を楽しげに見下ろす肌の青い人物がいた。

 暴食の悪魔より進化した魔族、グーラ。

 そいつは真っ赤に染め上がる街の様子に愉悦を感じ、邪悪に微笑む。

「どうやら、楽しんでくれたみたいだね…………」

 そんなグーラの後ろから、一人の男が近付いて来る。

「あぁ? 何だ、来てたのかよ! 来てたなら、少しは俺と遊べよなああああっ!!?」

「お断りしておくよ。

 君と戦うのは本当に疲れるからね」

「ちっ…………。

 つまんねぇの…………」

 男に拒絶されて、子供のようにふて腐れるグーラ。

 男はそんなグーラの様子を一瞥する事もなく、街の方へと視線を向ける。

 男の視線の先では、今も悲鳴と血しぶきを上げながら、逃げ惑う住民達の姿がある。

 冒険者やら、騎士やらが食い止めようと試みるも、無残に散っていく様を眺めて----------------

「最高の眺めだ…………」

 感嘆に打ち震えて、涙を流す。

「やはり、悲劇とは感動的なものだ。

 笑顔で、平穏を教示していたである民が、ある日突然、成す術もなく、蹂躙される。


 それをこんな特等席で見られるなんて…………!

 私はなんて幸運なんだ!?」

「…………相変わらず、意味が分からねぇな…………」

 呆れたように呟くグーラ。

 そんな事を気にせずに、男は泣きむせびながら、その両手を夜空へ広げた。

「私は今日という日を忘れない!

 この殺戮と悲鳴こそ、私が生まれた意味なんだ!?」


「どうでもいいが…………俺の邪魔はすんなよ……?」

「ふふふっ…………。

 それは、彼ら次第だよ…………」

 赤く染まる王都に、男の怪しい笑みが浮かぶ。

「例え、君のお気に入りでも、私に歯向かう者は誰であれば、奪うさ…………。

 私の欲はそれだけ深いんだ!

 それこそ、世界の全てを手に入れたくなるくらいに、ね…………」

「そうかい…………。

 なら、早い者勝ちって事で…………」

 グーラは若干、嫌そうな顔をするが、その男と握手を交わす。

 この日を境に、歴史は大きな転換を迎えた。

 帝国王都は、その男に乗っ取られ、平穏な時代は終わりを告げる。

 そんな事を露知らず、ライハは王国と帝国の国境に迫っていたのだった。
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