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第二章 水の都市の大罪

大罪は二体?

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「結論から言うが…………。

 今回の悪魔は二体いる」

 俺は聖女に頼んで、船内にある会議室に騎士達を集めさせた。

 そして、最悪な結論を告げると会議室に同様が走る。

「まあ、とりあえずはこれを見てくれ…………」

 俺は皆に見えるように、スキルで使った投影機型の魔道具を使って、背後の壁に探査機の映像を見せた。

 改めて、見ると…………『美女と野獣』ならぬ、『人魚とクラーケン』だな…………。

 とりあえず、この二体の魔物に付いての説明をして行った。

 特に、このクラーケンの方の弾道ミサイルの事は念入りに話した。

 でもまあ、目の前で、弾道ミサイルの脅威を肌で感じ取っていたので、すぐに理解していたようだが…………。


「そして、この魔物の最も厄介な点は、この人魚型の魔物と共生している事だ」

「…………それの何が厄介なの……?」

 よく分かっていないであろう。

 疑問符を頭の上に浮かべていそうな、聖女が手を挙げて質問して来る。

 まあ、他の連中も事の重要さに気付いていないようだし…………。

 仕方ないわな…………。

「まず、このクラーケン型の魔物だが…………。

 こいつには、ちょっと、厄介な魔法を持っていてな…………。

 そこにいる聖女様はよく知っていると思うが…………。

 こいつは、あの辺境の町を一夜にして滅した『街道の悪魔』と同種な魔物で、個体特有の魔法を持っていると考えてくれ。

 そんでもって、こいつは《アブソーバー》っていう周辺魔力を吸収、蓄積し、この弾道ミサイルのエネルギー源にしている。

 しかも、このミサイルは魔力を溜めていけば、溜めていく程、威力と破壊力が増していくんだ。

 それこそ、無尽蔵にな…………」


「ですが、それだと、周辺の魔力が尽きたら、その供給も止まるのでは……?」


 おっ、良い質問だぞ!

 聖女様!


「確かに、その通りなんだが…………。

 この人魚型の魔物が共にいれば、話は別だ。

 実はな、この魔物もこのクラーケン型と同じもの。

 つまり、同族なんだわ」

「…………!?」

 聖女の顔が一瞬で強張った。

 だが、他の連中の表情を見るに、やはり、分からないようだな…………。

「聖女だけは分かったみたいだな…………。

 分かっていない奴に、分かり易く教えると…………。

 こいつも《大罪の悪魔》と呼ばれる一体で、クラーケン型と同じ個体特有の魔法を有している。

 推測だが、この魔物の持っている魔法ってのが----------------瞬間的に周辺魔力を無限に増幅させる、ってものだ」

 ここまで、来たら皆も事の深刻さを理解したようだ。

 つまり、この人魚の魔物がいる事によって、クラーケン型の周辺魔力が瞬間的に増幅。

 それをクラーケン型の魔物が、その魔力を吸収して、ミサイルの威力と破壊力を増加。

 しかも、二体が共生する事によって、周辺の魔力が増えるのも、ミサイルの威力や破壊力が上がるのも、際限がなく、無限に上がり続ける。

 
 それを止めるためには、魔力の供給源になっている人魚型の魔物を先に倒す必要があるが…………。

 それを吸盤の数だけ、弾道ミサイルを溜め込んだあのクラーケン型が守っている。

 クラーケン型の大きさは映像の大きさからして、全長四百メートル。

 人魚型の魔物に近付くものは、探査機を落とした例をあげるまでもなく、容赦なく、叩き潰しているようだし…………。

 はっきり言って、付け入る隙がない。

 
 そのため、必然的に、クラーケン型を倒す事になるが、そもそも、相手は人間が立ち入る事の出来ない海中三百メートルの海の底だ。

 動く気配もないしな…………。


「このままじゃ、俺達は何も出来ず、スイレンの都が滅びるのをただ指を加えて待つしかない。

 そこでだ。

 おい、聖女…………」

「へぇ…………っ!? な、何……?」

 俺は聖女の方に視線を向けた。

 突然、声を掛けられた聖女は戸惑ったように、素っ頓狂な声を上げた。

「悪いが、ちょっと、手を貸せ…………」

 正直、この手は使いたくなかったが…………。

 仕方ない。
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