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第三章 願いの終焉

死に蝕まれて…………

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「実験は成功ね…………」

 誠達が戦いを終え、村人達の治療に動き出す中、フードを被った一人の女性が先程の光景を思い出し、ほくそ笑んでいた。

 その女性こそ、今回の魔物騒動の首謀者にして、『マホロバ』第一席のミモザだった。

 ゴルザが王国に捕縛されたのを知った後、彼女はすぐ様、残存戦力をまとめ上げ、ある作戦を立てた。

 それはあの《召喚術式》を用いた『マホロバ』存続させる為の一か八かの賭けだった。

 だが、成果は自分の予想を上回るものであり、このまま、うまく行けば、組織を存続させる所か、組織の願いを成就させる事も容易くなる。

 不安要素があるとすれば、あのだ。

 今回、襲わせた村--------

 そこで遠目から見た王国の騎士らしき十代後半くらいの少女。

 あの少女が、何もない空間から銃火器系や盾などの防具系の武器を創り出しているのは分かった。

 問題はその方法。

 まず、間違いなく、あれは神器の魔法だった。

 だが、何もない空間から武器を創り出す魔法。

 そんな魔法を使っている者など、自分の知る限りではいなかった筈。

 先程、不意を突いて死角から攻撃を加えてみたが、それに対応するだけの技術や対応能力は高いと見た。

「……………………」

 やっぱり、何度思い返しても、そのような人物に心当たりがない。

 考えられるとすれば、新たに神に選ばれた神器使いなのだが…………。

「まさか…………」

 ふと、心当たりがある人物の名を思い出す。

 『マホロバ』を窮地に追い込んだ元凶にして、憎き咎人------------キリエの名を…………。

「もしそうなら…………」

 そうであるなら、これは見逃す手はない。

 であればこそ、我々の宿願の為、今、自分達がすべき事こそ…………!!!

「これは…………計画を早めなければねぇ…………」

 彼女の頬が邪悪に緩む。

 これから起こるであろう事を思い浮かべて…………。

 自分達の宿願が叶う事に喜びに浸って…………。

 ただただ、歪に、黒い顔で、腹を抱えて、愉悦に酔いしれ、邪に笑う。

 そんな彼女の周りで、草木が見る見る内に痩せ細り、枯れていく。

 
 世界が死に蝕まれているかのように…………。

 
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