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第三章 願いの終焉

未知の魔物

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「何じゃあ、これは…………」

 それは唐突だった。

 剣聖の雅彦さんから緊急出動命令が入ってから、現場に到着してみると--------


 報告通り、見た事もない魔物が次々と村人を攫っていた。

 とりあえず、神器を起動して、すぐ様キリエの姿へと変身する。

「一美!」

「全隊、攻撃開始!!」

 俺はそのまま、神器の魔法を使って、部隊の全員の目の前に、マシンガン、ライフル、バズーカなどの銃火器系の武器を瞬時生成して、皆がそれを受け取ると…………。

 一美の指示の元、攻撃を始める。

 短期間とはいえ、ある程度、彼らにはそういった武器の訓練をさせておいて正解だった。

 見る見る内に、魔物は撃ち落とされる。

 俺はと言うと、魔物に捕まっていた人達が落下して来るのを、魔法で怪我をさせる事もなく、次々と地面に下ろして、村を駆け回る。

 途中、何体か、俺の方に向かって来たが、攻撃を避けつつ、銃火器を生成して、撃ち落とす。

 そうしている内に、自分達の振りに気付いたのか、魔物達が退き始めた。

「まずいな…………」

 まだ、何人か、村人を連れ去っている。

 ここで、あの魔物達を逃す訳にはいかない。

「逃がさない!」

 俺は再び、魔法を発動。

 ライフルを創り出そうとして--------

「っ!?」

 殺気を感じ取り、慌てて、盾を創り出して、左側の森の茂みの中から放たれた攻撃を防ぐ。

 これは…………!?

「くっ…………!!」

 放たれた何かは物凄い勢いで放出をし続け、押し切られた俺はそのまま後ろに吹き飛ばされ、屋根の上から落ちてしまう。

「くそっ…………!!」

 何とか、受け身を取って、着地したが、時既に遅く…………。

 思わず、悔しさのあまり、拳を地面に叩き付ける俺。

 先程の攻撃に時間を取ってしまい、魔物達を取り逃してしまった。

 空を見上げると、もう奴らの姿が点にしか見えない。

「誠!」

 声がする方向に顔を向けると、一美がこちらの方へと走ってくるのが見える。

「大丈夫!?」

「えぇ、私は大丈夫よ。それよりも、状況は……?」

 俺は気持ちを切り替えて、一美に向き直って、立ち上がると、一美に問い掛ける。

「こっちは誠の魔法のおかげで、損耗は軽微。

 負傷した者も、それなりにはいるけど、命に関わるような者はないわ。

 それよりも、随分とずぶ濡れみたいだけど、誠こそどうしたの……?」

「えぇ、ちょっと、色々あってね…………」

 俺は先程の出来事を一美に話した。

 魔物を追撃しようとして、何者からの攻撃を受けた事。

 明らかな、殺意を持って放たれた事。

 そして、その放たれたものが、十中八九、神器による魔法攻撃である事も…………。

 それを聞いて、一美の顔が険しいものに変わった。

 恐らく、一美が考えている事は、俺と同じであろう。

 まだ予測の範囲内だが、恐らく間違いない。

 あの魔物は、あのテロ集団『マホロバ』が関わっている可能性がある。

 だが、とりあえず、今は被害を受けた村の方に意識を向けるべきだ。

 見るだけでも、かなりの被害が出ている。

 怪我人も相当数いる筈だ。

 医療キットも心許ない筈…………。

 王宮の方にも、連絡を入れないといけない。

 今は考えるよりも動く時--------

「先に村人達の治療を優先しつつ、王宮の方に支援要請、ね……?」

「ふっ…………」

 流石は一美、俺の考えを読んでくれるか。

 こういう時はすごく助かる。

「なら、とりあえず、今はやれる事をやりましょうか……?」

「了解!」

 俺達は互いに頷き合うと、すぐ様行動に移した。

 これが、最悪の始まりだったなど、知らず…………。

 
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