魔法聖戦の女神 〜変幻自在の魔導書は規格外過ぎた〜

水先 冬菜

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第二章 規格外の魔導書

縁を結ぶ理由

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「すまないが…………もう一度、言ってくれないかな……?」

 雅彦様は口元をハンカチで拭きつつ、問い返して来た。

「はい。あなたの娘、神童一美さんと結婚させて欲しいと申しました」

 言った!

 よく言った俺!!

 一美は驚きのあまり顔を真っ赤にして、硬直していたが…………。

 それはさほど重要ではない。

「理由を聞いても…………良いかい……?」

 雅彦様は腹の内を探ろうと、ジッと俺を見つめて来る。

「簡単な話…………。俺は一美の事しか考えていない、って事が分かっただけですよ」

 俺は臆する事なく、堂々と胸の内を語り出す。

「最初は、正直、鬱陶しくて、面倒くさい奴だと思ってました。

 そんで、あの事件が起きてから俺の人生は一変。

 使えないと言う理由から親元から離されて、かなり精神的にも応えてましたね」

 一美の方に視線を向けると、一美は鎮痛な面持ちで食い入るように俺の話に耳を傾けていた。

 何だか、それが嬉しくて、思わず優しく微笑み掛けながら、話を続けた。

「そしたら、やたら罪悪感か、責任感か、分からない猪突猛進で、不器用なバカが婚約を掛けて、勝負を持ち掛けて来ましてね。

 何だかんだで、気が滅入っていた俺には、あの時間が唯一の救いでした。

 それから、詐欺紛いの方法で、婚約が決まって、普通なら迷惑だな…………って思う反面、嬉しいと思う事もあって…………。

 婚約してからも、どうやって婚約を破棄してやろうと、色々とあの手この手と悪巧みをしているにも関わらず------------満更でもない自分がいて…………。

 結局の所、このバカと付き合って行くのが好きだっただけなんです」

 ほんと、今でも、俺自身、こんな事に気付けなかった事が恥ずかしいと思える。

 初めて会った時は、無理している彼女が心配で、言い返した。

 彼女を守りたくて、庇った。

 嫌いと言いつつ、本当は彼女の事が好きで好きで仕方がなかった。

 よくよく考えても、常日頃から俺は彼女の事を毎日のように考えていた。

 面倒な時も、鬱陶しい時も、嬉しい時も、楽しい時も、何だかんだ言って、彼女の事が頭から離れなかった。


「そして、そんな俺の一途な想いが、こいつに…………俺の神器にすら現れた」

 俺は無意識に左手の中指にはめられた指輪に視線を向けた。

「誠…………。あなた、まさか…………!?」

 その視線に気付いた一美が、何かを悟ったように口元を覆う。

「ああ…………。完全に記憶が戻ったよ。そんでもって、お前の予想通り…………俺がキリエだった」

「「っ!?」」

 二人して驚きのあまり目を見開いた。

 だが、雅彦様も、一美の報告は聞いていたのか、すぐに落ち着きを取り戻して、無言で続きを進めて来る。

「まず見て貰った方が良いかな……?
 
 描け! 永久図書館エンドレス・レコード!」

 俺の指輪が淡い光を放ち、目の前に俺の神器がその姿を現す。

「これが俺の神器--------永久図書館エンドレス・レコードです」

「これが君の…………」

 雅彦様が俺の神器をしばし、見つめながら俺は神器の魔法について…………。

 この神器の危険性について話した。

 これは危険な賭けだが、致し方ない。

 二人は俺の説明を聞き終えると、再び驚いては、途端に考え込み始めた。

「確かに、これが王宮の者達の耳にでも入ったら、危険だ。

 それどころか、その力を利用して、良からぬ輩が卑劣な手を使って来る可能性はある」

「はい、仰るとおりです。

 ですから、私は制限を付けるべく、この神器の力を使って、神器そのものにある細工をしました」

「神器に細工を……? それはどのようなものなんだい……?」

「簡単に言えば、この神器に蓄えられた魔法を発動する為の発動条件を付け加えたんです。

 それは先程の結婚と深く関わっているのですが…………。

 こいつに付け加えた発動条件。

 それは------------」


 《剣聖と縁を結び、誓約者を定める事》

 それを聞いた瞬間、二人の頭に電気が走った。

「なるほどな…………」

 それを聞いて、納得したかのように悪い顔をして頷く剣聖。

「誠らしいね…………」

 そして、心底、目に涙を溜めて、面白そうに笑う一美がいた。

 俺も釣られて頬が緩むが…………きっと、雅彦さんと同じ顔をしている事だろう。

「それで、どうでしょうか……? この話、受け入れてくださいませんか……?」

 その後、雅彦さんが喜んで、首を縦に振った事は言うまでもない。
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