魔法聖戦の女神 〜変幻自在の魔導書は規格外過ぎた〜

水先 冬菜

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第二章 規格外の魔導書

聴取不能

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「……………………」

 朝、目が覚めると、目の前に彼女があった。

 昨夜の事をしみじみと思いつつ、やっちまったと思う今日この頃。

 とりあえず、腹も減ったし、朝飯でも作りますかね。

 んで、しばらく、定番のスクランブルエッグやら、トーストやらを焼いていると…………。

「お、おはよう…………」

 頬を赤らめた一美が寝室のドアを盾にして恥ずかしそうにこちらを見て来る。

「おう。起きたか…………。もう少しで出来上がるから、座って待ってろ…………」

「う、うん…………」

 ぎこちなく頷く彼女に思わず、ドキッとするが…………。


 平常心、平常心っと…………。

 結局、この後も、一美は俺に対して、目を合わせる事なく、恥ずかしさのあまり縮こまっていた。

 ほんと、普段からそういう所は見せて欲しいもんだ。

 まあ、これからゆっくりと見ていけば良いか…………。

 とりあえず、まずやるべき事は…………。


------------------------------------------

「おっす! 雅彦様、昨夜ぶりっす!!」

「失礼でしょ!?」

「痛い…………」

 
 俺達はあれから王宮にいる一美の父、この王国の剣聖、神童雅彦の元へを訪れた。

 訪れた理由はもちろん、昨夜襲撃して来たマホロバに関してだ。

 昨夜は一美を襲われ、頭に血が昇った俺が肉体的にも、精神的にも叩き潰した所為で、廃人になってしまっていた。

 マホロバに関する尋問を行うにも、口が開けるとは思えない。

 その旨を伝えると--------

「君の言う通り、あまり芳しくはない」

 予想通りの返答が返って来た。

 やはり、廃人になった彼らは口を開くどころか、今も精神に異常をきたして、自殺を図ろうとする者が立たないそうだ。

 その為、今は全身を完全に拘束され、投獄されているそうだ。

「色々と面倒をお掛けして申し訳ありません」

 俺は誠意を込めて、頭を下げた。

「いや、君のおかげで、一美もこの通り無事だったんだ。父親としては、お礼を言いたい所だよ。まあ、仕事が増えるのは困るがね」

「本当に申し訳ありません」

 若干、嫌味っぽく言って来るって事は、相当お疲れのようだ。

 ほんと、昔から面倒ごとを押し付けて来たが故、この人には頭が上がらないよ。

 でも、そんな人だとしても、今日は言わなきゃいけない事がある。

「そんな仕事を増やすような事をしておいて、大変申し訳ないのですが…………。

 雅彦様にお願いしたい事があります」

「…………何だね……?」

 突然、真剣味を帯びた口調で話だし、真っ直ぐに自分を見つめて来る俺に、雅彦様は不思議そうに尋ねて来る。

 ああっ! 緊張で心臓がバクバクするよ!!

 言えっ!!

 言うんだ、俺!?

 こういうのは男の俺がはっきりと言うもんだろ!?

「実は…………彼女、神童一美さんとさせては頂けないでしょうか?」

 その瞬間、雅彦様は口にしていた紅茶を驚きのあまり、勢いよく吹き出した。
 
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