魔法聖戦の女神 〜変幻自在の魔導書は規格外過ぎた〜

水先 冬菜

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第二章 規格外の魔導書

至福の時って奴だな

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「あらら…………。ちと、やり過ぎちまったかな……?」

 悲痛な悲鳴が止むと、ゴルザは虚な目を見開いたまま、気絶していた。

 どうやら、完全心が死んでしまったようだ。

 一美に手を出されて、我を忘れたとはいえ、ちょっと反省…………。

 とりあえず、一美の方を優先するか。

「怪我はねぇか……?」

 俺はベットまで一美を運ぶと、そう訊いた。

 彼女は戸惑いながらも、首を横に振った。

 それに安心した俺はすぐ様王宮に連絡した。

 数分後、騎士団が医療施設に到着。

 医療施設にいた人達は皆、保護され、心身喪失したマホロバの連中は皆が皆、虚な目で、唯々諾々と騎士団の面々に連行されていった。

 正直、少々、やり過ぎたが故の罪悪感を覚えたが…………。

 それ以上に非道な事をやって来たテロリストにそんな殊勝な心得はいらないな、と気持ちを切り替えて寝ようとした。

 だが、そこは問屋が卸さない。

 すぐに愛しの婚約者様に捕まった。

 そんでもって、何故か、俺の寮で一緒に寝る事になった。

 添い寝って奴だ。

 何でこうなるかな……?

 そう頭を抱えていると、着替えを終えた一美が寝室に入って来た。

「お待たせ…………」

「お、おう…………」

 不覚だが、浴衣姿で一美が現れた瞬間、一瞬だが見惚れていた事は黙っておこう。

 うん。

 体のラインが浮き出ていて、色々と出る所は出ていて、実に素晴らしい!!

 あのテロ集団と同じみたいで嫌だが…………。

 神様!!

 ありがとう!!

 生きているって最高!!

「バカ…………!」

 一美に枕を投げ付けられました。

 顔面に命中、ベットから落ちました。

 それから何やかんやあって、一緒に寝ています。

 猫みたいに俺の胸に顔を埋めて抱き付いて来る彼女が何だか、めちゃ可愛く見えるんですが…………。

 俺は夢でも、見ているんでしょうか……?

 てか、触れたら壊れそうな程なのに、女ってこんなに柔らかいのな…………。

 って、俺は何を考えているんだ……?!

「ねぇ…………誠…………」

「ひゃいっ!?」

 思わず、上擦った声を上げて返事をする俺。

 何だよ!

 そんな猫撫で声みたいな甘い声出しやがって…………!?

 そんな乙女っぽく振る舞えるなら、いつもそうしろよなっ!?

 不覚にも、心臓がバクバクと鼓動の高鳴りを強めて行く俺…………。

 理性というダムがいつにも増して、決壊しそうになるのを必死に抑えようとする。

 やばいっ!!

 いつにも増して一美が可愛く見える!!?

 だが、そんな俺の動揺とは裏腹に、一美は胸元から不安げに顔を上げて来た。

 よく見ると、心なしか、体が小刻みに震えていた。

「本当に大丈夫……?」

「……………………」

 その問いに俺は思わず俺は言葉を失った。

「どうしたんだよ……? 急に…………」

「どうしたもこうしたもないよ…………。さっき、私を助けてくれた時のあれ…………。神器の力だよね…………?」

 出来るだけ、平静に話そうと心がけてはいるが、彼女は目に涙を溜めて、弱々しく語りかけて来る。

 あの襲撃の後、やたらと俺の体の心配をして来た。

 あの時は、適当にその場をあしらったが…………。

 それでも、彼女はしつこいくらいに迫って来た。

 今思い返せば、彼女はあの時、我を忘れる程、かなり焦っていたような気がする。

 それが何故か、俺はすぐに悟った。

 彼女はまた自分の所為で、俺が傷付く事を酷く恐れたのだ。

 過去に俺は彼女を庇い、三年程の月日をベットの上で過ごした。

 それが原因かは知らないが、彼女は一時期、笑う事さえない程、相当に落ち込んでいたと聞いた。

 あの時、庇ったのは俺の意思であり、別に彼女の所為ではないのだが…………。

 不器用で、生真面目な彼女は全く持って、納得などしないだろう。

「全く…………」

 本当に面倒で…………愛しいよ…………。

 俺は彼女の上に覆い被さると、その口を封じた。

「むっ…………!? ん…………」

 彼女は突然の事に一瞬だが、驚きを見せるが…………。

 やがて、その瞳を閉じた。

「そんなに心配なら…………じっくりと、安心させてやる…………」

 俺は彼女の目を真っ直ぐと見つめて、彼女の頬に手を添えた。

 彼女は俺の意を汲み取り、再び目を閉じる。

 月日が照らされる部屋で、二つの影が一つになった。
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