魔法聖戦の女神 〜変幻自在の魔導書は規格外過ぎた〜

水先 冬菜

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第二章 規格外の魔導書

襲撃

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 ブリーフィングが終わり。

 私は慌てて、誠の病室へ向かった。

 実は最近、誠が時折、部屋から抜け出していると、医療施設の職員から連絡を受け、こっそりと監視装置を誠の病室に付けておいたのだ。

 もし誠が病室へ抜け出した場合、腕時計に見せかけた警報放置で分かるようにしてある。

 そして、その成果はというと--------

 もぬけの殻となっている病室を見れば、一目瞭然だった。

「あのバカ…………!」

 検査結果は極めて健康的で、問題ないとはいえ、誠の神器は未だに不明。

 もし何かがきっかけで、得体の知れない神器が暴走でもしたら…………。

 それが原因で、誠の身に何かあれば…………。

 急いで、病衣に仕込んだ発信器の反応を辿ろうと端末を取り出そうとして------------いきなり、誰かに手首を掴まれた。

「え……?」

 掴まれた手から端末が床に落ちる音が廊下に響き渡る。

 私は恐る恐る振り返ると、フードを被った怪しげなローブの……………がたいの良い手からして、男が私の手首を掴んでいた。

「誰……?」

 私はその手を振り払って、そいつとの距離を取り、警戒する。

 すると、そいつはフードの端から見える暗闇で光る赤い眼光を私に向け、まるで獣のように獰猛に微笑む。

「見つけた…………」

「っ!?」

 私は身の危険を感じて、一目散に駆け出した。

 そして、誠の病室内の窓を突き破って外へ飛び出したのだが…………。


 窓を突き破った瞬間、視界が急に先程の室内に戻ったかと思うと、そいつに背後から馬乗りになって、ベットの上に組み伏せられていた。

「どこへ行くつもりだ……?」

「くっ…………。うっ…………」

 何とか、抜け出そうと試みるが、背後に押さえ付けられた右腕を捻って、そいつは動きを封じてくる。

 右腕に走った痛みで、思わず苦悶の声を上げた私は何とか、そいつの素顔を限界ギリギリまで首を回して確認する。

 そいつが着ているローブの胸の辺りには、見覚えのある刺繍がなされていた。

 三日月に、盾の紋様で描かれているそれは間違いなく、あのテロ集団『マホロバ』のもの。

 どうして、ここに『マホロバ』が……?

「一応、言っておくが、声を出しても無駄だ。既にこの施設は我々が占拠した。捕らえた人質の身を案じるなら大人しくする事だ」

 驚愕で、目を見開いている私に、そいつはまたニタニタと獰猛に笑う。

 私はキッと睨み付けるが、そいつはどこ吹く風と言わんばかりに熱が入ったかのように突然語り出した。

「思えば、もこうしていれば、こんな事にはなっていなかったんだ!! 

 そうだ!! 

 あの時もこうやってさえいれば良かったんだ!!」


 私は正直戸惑っていた。

 突然、人が変わったみたいに訳の分からない事を大声で叫びながら、喚き散らす、そいつは明らかに目が血走っていた。

 それが狂気に染まるまで、然程時間を要しなかった。

「だが、これで我らの願いが叶う!! 今こそ、我らの想いを叶えると--------」

「ぐちぐちうるせぇ…………」

 そいつが何かローブの内から何かを取り出そうとして、姿が視界から消えた。

 すると、背中にあった圧迫感が消えて--------

「何、人の女に手ぇ出してんだ……? 消すぞ…………。ゴミカス…………」

 本気で怒りを露わする愛しい彼の腕に抱えられていた。

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