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第二章 規格外の魔導書
剣聖
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王宮内のとある一室--------
普段は部隊間での作戦などを説明するブリーフィングルーム内------------ある者の緊急召集により、一美達、神器を保有する第一騎士団の面々が集められていた。
その召集した者が入って来るなり、騎士団全員立ち上がり、敬礼する。
その人物は誰を隠そう、ベルマール王国最強の剣聖にして、神童一美の実父。
第一騎士団の団長、神童雅彦その人である。
「皆、夜遅くに集まって貰って申し訳ない。
実は東の国境付近にあるエリダシュ砦から緊急を要する連絡が入った。
何でも、あの国際的テロ集団『マホロバ』が動いているらしい」
「「「「「!!!!!」」」」」
雅彦の説明に室内の皆に緊張が走る。
雅彦の説明によると、東の国境付近で、マホロバのメンバーの目撃情報が多々あり、既に一般人を含めた何人もの犠牲者が出ているらしい。
その為、第一騎士団は準備が整い次第、順次エリダシュ砦へと出発し、マホロバの目的を探り、可能であればこれの排除を行うとの事だ。
幾つかの団員達の質問に受け答えした後、ブリーフィングを終えた雅彦はふと、幾人かの騎士が室内から出ていく中、ある人物が視界に入り声をかける。
もちろん、その人物は自分の娘、神童一美である。
「誠の事が…………気になるのか……?」
「……………………」
娘は答えなかったが、明らかに気にしている素振りを見せた。
「報告は聞いている…………」
それ以上は何も言わなかった。
だが、娘には私の考えを汲み取ったようで、顔を上げて私と視線を合わせた。
「出来るだけ、私の方でもフォローはしておくが…………。あやつなら、心配するだけ無駄だ」
私は真っ直ぐに娘の目を見つめて、そう断言した。
「あやつの事だ。また何か、悪巧みでもしてはどんな問題であろうと切り開くわ…………。少しはあやつを信用してやれ」
「…………はい…………」
娘は少し元気を取り戻したのか。
ハッとなって、何かに気付いて、慌ててブリーフィングルームを出て行った。
「全く、相変わらず落ち着きがない」
呆れつつも、自然と笑みが溢れた。
あの事件が起きてから、娘は一時期、心を閉ざしてしまった事がある。
その原因となったのが、娘の許婚である彼、刀城誠だ。
彼は娘を守る為に、あの事件で我が身を挺して庇い、代償として、二度と剣を握れぬ体になった。
娘はそれに負い目を感じては、自分を追い詰めていき、いつしか笑う事が無くなっていった。
だが、そんな負い目を感じている娘に、彼は面倒くさがりながらも、色々と手を尽くしてくれた。
それが功を奏したのか、娘に笑顔が戻っていき、今ではすっかり、周りが焼けるくらいに、彼にゾッコンだ。
だからこそ、彼の事が気が気でないのが分かる。
報告では、彼の神器は彼自身に与える影響は計り知れない。
今回もほんの少し模擬戦をしただけで倒れて、記憶の一部を思い起こせない状態になっていると聞く。
そのため、今は治療のため、王宮内の医療施設にて、入院を余儀なくされている。
だが、私にはある確信があった。
彼の事だ。
恐らく、今も良からぬ事を淡々と考えているに違いない。
それも、我が娘…………一美の事を第一に考えて…………。
周りがどれほどの迷惑を被るかを考えもせずに…………。
全く、苦労するこちらの身にもなって欲しいものだ。
そう思いつつも、彼が今度は何を仕出すのか楽しみにしている自分がいる。
ほんと、私に退屈なひと時を与えない少年だ。
彼に期待を寄せつつ、気持ちを切り替えて、部屋を退出する雅彦。
この時既に、マホロバも、誠も色々と裏で動き出していた事など露知らず…………。
剣聖は、いつも通りの日常へと戻っていった。
己が信念を貫き通す為に…………。
普段は部隊間での作戦などを説明するブリーフィングルーム内------------ある者の緊急召集により、一美達、神器を保有する第一騎士団の面々が集められていた。
その召集した者が入って来るなり、騎士団全員立ち上がり、敬礼する。
その人物は誰を隠そう、ベルマール王国最強の剣聖にして、神童一美の実父。
第一騎士団の団長、神童雅彦その人である。
「皆、夜遅くに集まって貰って申し訳ない。
実は東の国境付近にあるエリダシュ砦から緊急を要する連絡が入った。
何でも、あの国際的テロ集団『マホロバ』が動いているらしい」
「「「「「!!!!!」」」」」
雅彦の説明に室内の皆に緊張が走る。
雅彦の説明によると、東の国境付近で、マホロバのメンバーの目撃情報が多々あり、既に一般人を含めた何人もの犠牲者が出ているらしい。
その為、第一騎士団は準備が整い次第、順次エリダシュ砦へと出発し、マホロバの目的を探り、可能であればこれの排除を行うとの事だ。
幾つかの団員達の質問に受け答えした後、ブリーフィングを終えた雅彦はふと、幾人かの騎士が室内から出ていく中、ある人物が視界に入り声をかける。
もちろん、その人物は自分の娘、神童一美である。
「誠の事が…………気になるのか……?」
「……………………」
娘は答えなかったが、明らかに気にしている素振りを見せた。
「報告は聞いている…………」
それ以上は何も言わなかった。
だが、娘には私の考えを汲み取ったようで、顔を上げて私と視線を合わせた。
「出来るだけ、私の方でもフォローはしておくが…………。あやつなら、心配するだけ無駄だ」
私は真っ直ぐに娘の目を見つめて、そう断言した。
「あやつの事だ。また何か、悪巧みでもしてはどんな問題であろうと切り開くわ…………。少しはあやつを信用してやれ」
「…………はい…………」
娘は少し元気を取り戻したのか。
ハッとなって、何かに気付いて、慌ててブリーフィングルームを出て行った。
「全く、相変わらず落ち着きがない」
呆れつつも、自然と笑みが溢れた。
あの事件が起きてから、娘は一時期、心を閉ざしてしまった事がある。
その原因となったのが、娘の許婚である彼、刀城誠だ。
彼は娘を守る為に、あの事件で我が身を挺して庇い、代償として、二度と剣を握れぬ体になった。
娘はそれに負い目を感じては、自分を追い詰めていき、いつしか笑う事が無くなっていった。
だが、そんな負い目を感じている娘に、彼は面倒くさがりながらも、色々と手を尽くしてくれた。
それが功を奏したのか、娘に笑顔が戻っていき、今ではすっかり、周りが焼けるくらいに、彼にゾッコンだ。
だからこそ、彼の事が気が気でないのが分かる。
報告では、彼の神器は彼自身に与える影響は計り知れない。
今回もほんの少し模擬戦をしただけで倒れて、記憶の一部を思い起こせない状態になっていると聞く。
そのため、今は治療のため、王宮内の医療施設にて、入院を余儀なくされている。
だが、私にはある確信があった。
彼の事だ。
恐らく、今も良からぬ事を淡々と考えているに違いない。
それも、我が娘…………一美の事を第一に考えて…………。
周りがどれほどの迷惑を被るかを考えもせずに…………。
全く、苦労するこちらの身にもなって欲しいものだ。
そう思いつつも、彼が今度は何を仕出すのか楽しみにしている自分がいる。
ほんと、私に退屈なひと時を与えない少年だ。
彼に期待を寄せつつ、気持ちを切り替えて、部屋を退出する雅彦。
この時既に、マホロバも、誠も色々と裏で動き出していた事など露知らず…………。
剣聖は、いつも通りの日常へと戻っていった。
己が信念を貫き通す為に…………。
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