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第二章 規格外の魔導書
永久図書館
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「描け! 永久図書館!」
夜--------
何とか、病室をうまく抜け出せた俺は王宮内の医療施設の屋上で、誰もいない事を確認すると、自分の神器を起動してみた。
指輪からあの辞書のような分厚い書物へと変化し、俺の掌の上で浮遊している。
そして、俺はキリエの姿に変身して、何ページかをめくっては満足そうに頷く。
俺の神器《永久図書館》は--------
はっきり言って、めちゃくちゃで、代償が軽過ぎる、規格外の神器だ。
初めて、聖戦へ参加した際、最初のページに浮かんだ文字。
それを読み終えた時、俺はあまりにも恐ろしいこの神器の魔法に背筋が凍ったものだ。
何せ、この神器の魔法は『自動』と『創造』と『保管』の三つの魔法が一つになった複合魔法の神器だったからだ。
これだけ聞いたら、何が怖いのかよく分からないだろう。
なら、想像してみてくれ。
例えば、自分の願った魔法を瞬時に作ってしまう魔法があるとしよう。
国を滅ぼしたい。
なんて物騒な事を思ったら、そう思った通りに国を滅ぼす魔法が一瞬で出来た。
世界一、足が速くなりたい。
そう思ったら、一秒で星を丸っと一周する程の速さで動ける魔法が出来た。
何でも良いから武器が欲しい。
そう考えたら、どんな武器でも瞬時に、手元に取り寄せる魔法が出来た。
つまり、何が言いたいのかと言うと…………。
俺の神器は、俺が考えたり、願ったりなどした際に、それに適した形の魔法を一瞬の内に作り出すという事だ。
しかも、その作った魔法は神器内に記録として保存され、使いたい時には神器が、俺の思った通りの魔法を俺の意思に反映する事はなく、自動で発動してくれる。
簡単に言うなら、俺の思う通りに、魔法を発動したり、作ったりする万能兵器だ。
まあ、代償として、神器を起動した際、女の姿へと変身してしまうが…………。
だからこそ、怖いものがある。
これがもし、王宮にでも知られたりしたら…………。
考えたくはないが…………。
あまりにも大き過ぎるこの力を恐れて、まず間違いなく、国は俺を管理下に置こうと考えるだろう。
そうなった場合、最悪、王宮に勤めている一美を人質にして、何かしら要求してくる可能性が高い。
良くも悪くも王宮は欲望の吹き溜りだ。
良からぬ事を考える奴はそれなりにいる。
話すにしても、せめて自分も仲間も守れるくらいの圧倒的な力をつけなければならない。
もしくは、この力に制限を掛けて、抑え込む何かがあれば…………。
と言っても、方法は一つしかない…………。
って、一応、答えは出ている感じだがな…………。
俺は自嘲しつつ、ページを一つ一つ確認していく。
そして、あるページが目に止まると、不意に微笑んだ。
月に照らされたその顔は--------何やら困っているようで、嬉しそうでもあった。
夜--------
何とか、病室をうまく抜け出せた俺は王宮内の医療施設の屋上で、誰もいない事を確認すると、自分の神器を起動してみた。
指輪からあの辞書のような分厚い書物へと変化し、俺の掌の上で浮遊している。
そして、俺はキリエの姿に変身して、何ページかをめくっては満足そうに頷く。
俺の神器《永久図書館》は--------
はっきり言って、めちゃくちゃで、代償が軽過ぎる、規格外の神器だ。
初めて、聖戦へ参加した際、最初のページに浮かんだ文字。
それを読み終えた時、俺はあまりにも恐ろしいこの神器の魔法に背筋が凍ったものだ。
何せ、この神器の魔法は『自動』と『創造』と『保管』の三つの魔法が一つになった複合魔法の神器だったからだ。
これだけ聞いたら、何が怖いのかよく分からないだろう。
なら、想像してみてくれ。
例えば、自分の願った魔法を瞬時に作ってしまう魔法があるとしよう。
国を滅ぼしたい。
なんて物騒な事を思ったら、そう思った通りに国を滅ぼす魔法が一瞬で出来た。
世界一、足が速くなりたい。
そう思ったら、一秒で星を丸っと一周する程の速さで動ける魔法が出来た。
何でも良いから武器が欲しい。
そう考えたら、どんな武器でも瞬時に、手元に取り寄せる魔法が出来た。
つまり、何が言いたいのかと言うと…………。
俺の神器は、俺が考えたり、願ったりなどした際に、それに適した形の魔法を一瞬の内に作り出すという事だ。
しかも、その作った魔法は神器内に記録として保存され、使いたい時には神器が、俺の思った通りの魔法を俺の意思に反映する事はなく、自動で発動してくれる。
簡単に言うなら、俺の思う通りに、魔法を発動したり、作ったりする万能兵器だ。
まあ、代償として、神器を起動した際、女の姿へと変身してしまうが…………。
だからこそ、怖いものがある。
これがもし、王宮にでも知られたりしたら…………。
考えたくはないが…………。
あまりにも大き過ぎるこの力を恐れて、まず間違いなく、国は俺を管理下に置こうと考えるだろう。
そうなった場合、最悪、王宮に勤めている一美を人質にして、何かしら要求してくる可能性が高い。
良くも悪くも王宮は欲望の吹き溜りだ。
良からぬ事を考える奴はそれなりにいる。
話すにしても、せめて自分も仲間も守れるくらいの圧倒的な力をつけなければならない。
もしくは、この力に制限を掛けて、抑え込む何かがあれば…………。
と言っても、方法は一つしかない…………。
って、一応、答えは出ている感じだがな…………。
俺は自嘲しつつ、ページを一つ一つ確認していく。
そして、あるページが目に止まると、不意に微笑んだ。
月に照らされたその顔は--------何やら困っているようで、嬉しそうでもあった。
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