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第二章 規格外の魔導書

生き残りをかけて

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「どういう事だこれは!?」

 とある国の古びた教会--------

 そこで、幾人と集まる人混みの中、一人の男が声を荒げていた。

 その集団はもちろん、最低最悪の狂信者テロ集団『マホロバ』のメンバーだった。

「今、聖域における同胞の生還率が一割にも満たないだと……!? 何だ、そのふざけた報告は!!?」

 その怒号を皮切りに、次々と非難の声が上がる。

 その集中砲火を浴びているのは、今聖戦の指揮を取っていた男。

 『マホロバ』の第二席、ゴルザはその非難を頭を下げたまま、顔も上げず、一心不乱に浴び続けた。

 今聖戦における『マホロバ』の被害は甚大だった。

 七割以上の同胞がたった一人の咎人によって屠られた上、今回は自分と同じ、十人しかいない最高峰の守護者の殆どを失った。

 はっきり言って、『マホロバ』には、もうまともに大国と戦えるだけの戦闘能力は無いと言っても過言ではない。

 それだけ、あのキリエとかいう咎人に我々は一方的に敗北したのだ。

 その敗北を受け入れられず、神器を失った今作戦に於ける参加者達が皆、聖戦が終わると同時に、自分の目の前で、首を掻き切って命を断った。
 
 運良く生き残ったのは、ほんの数十名だけ…………。

 あれだけ大規模かつ、最大級の戦力を投じて、あの悪しき咎人を殲滅しに向かった筈なのに…………。

 逆に返り討ちに遭い、僅かに生き残った同胞達と共にむざむざ敗戦して帰還した。

 今回の自身の失態は大きく…………。

 ゴルザの心情としても、『マホロバ』としてのプライドとしても、皆に合わせる顔がなく、腹わたが煮え繰り返る程の屈辱だった。

 結局、今回の集会は、敗戦の報告と自分に対する非難だけで終わった。
 
 そして、数日後に汚名返上とばかりに、ゴルザは密かに残りの幹部全てを招集し、ある提案を持ち出した。

 その提案を聞いた幹部達は当然の事ながら、困惑示したが…………。

 もうそれしか道は残されておらず、自分達の誇り、神への忠誠を為し得ない、と思い渋々その提案に乗る事にした。

 それが、更に自分達の首を絞める結果になるとも知らず…………。
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