魔法聖戦の女神 〜変幻自在の魔導書は規格外過ぎた〜

水先 冬菜

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第二章 規格外の魔導書

模擬戦の結末

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「やっぱり…………」

 闘技場の観客席--------

 そこで、彼、刀城誠の戦い方を見て、私は思わずそう呟いた。

 何故なら、魔法の使い方、避け方など、昨日見たあのキリエと瓜二つだったからだ。

 特に、あの炎の魔法。

 あれはキリエが初戦で使った神器の能力と一致する。

 もう間違いなく、キリエが誠であると私は確信を持って言えた。

 だが、負に落ちない点いくつかある。

 一つ目は、誠の動きが聖戦の時と比べて動きが遅く感じる。

 先日の戦いで見た、あの時のキリエは今の誠よりも洗礼され、瞬きする暇もない、瞬間的な速さで、相手を圧倒していた。

 だが、今の誠は、明らかにスピードが落ち込んでいるとばかりに、相手に見切られては、防がれている。

 その証拠に、高火力の高いあの魔法も、速さが追いついていない為に、容易く防がれている。

 もし、聖戦時の速さがあれば、多少なりともダメージを蓄積出来ただろう。

 
 二つ目は、魔力の消費量だ。

 私が側で見ている限りでは、あの魔法を一発打つ毎に、誠の魔力消費が自身の魔力の許容量を遥かに超えて消費されている。

 基本、魔力というものは、俗説では、人間の生命エネルギーに帰結していると言われている。

 それを意味するかのように、魔力の許容量を超えて、消費してしまった者は、誰もが例外なく命を落としている。

 それ故、魔法の行使は強力な力を得る代わりに、扱い方を間違えれば命を削る危険な力にもなる。

 だから、どの国も魔法の使用に関しては取り分け重要視しており、教える側も最新の注意を払っている。

 だが、誠は違う。

 魔力の流れを見る限り、誠の魔力はもう底をついているにも関わらず、平然と未だに魔法を連射している。

 常識では、考えられない状況だ。

 最後は、何と言っても、誠の神器に関してだ。

 誠の指に嵌められた指輪状の神器。

 あの状態は『休眠モード』と呼ばれる機能を停止している際の形態だ。

 神器使いなら、誰もが知っている機能の一つで、普段、神器を使わない際は皆、イヤリングや指輪、ネックレスなどの身に付け易く、持ち運び易い形で所持している。

 その状態の時は、魔法も、神器の性能も、何も発揮出来ず、そこらで売られているアクセサリーと大差ない筈なのだが…………。

 驚く事に、誠は何も出来ないその状態で、魔法を行使していた。

 ありえない。

 あり得なさ過ぎる。

 もしかしたら、誠の記憶喪失もあの神器に関係が--------

 そう考えていたら、突然、誠が倒れた。

「誠!?」

 私は慌てて、観客席から闘技場内へと飛び降り、誠に駆け寄る。

 すると、相手をしていた同期の男も、隊長も異変に気付いて行動し出す。

「誠! まことおおっ!!」

 隊長は控えていた部下に指示を出して、救護班が私達の方へと向かって来る。

 そして、誠は終始、私の呼び掛けに応える事はなく----------------意識が戻る事さえもなかった。
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