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第二章 規格外の魔導書

どうすればいいの?

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「大丈夫かな……?」

 聖戦が終わり、無事寮へと帰還した俺は帰還して早々に、アワアワと慌てふためいていた。

 その理由は当然、先程の戦闘で一美に言ったあの言葉。


『天才なんだか知らねえがな…………。少しは周りを警戒しろ。でないと、後で後悔する事になるんだぞ?』

 あの言葉は昔--------今日、倒したカルミラがあの事件を起こす前に、俺が一美に言った言葉だ。

 まずい…………!

 かなり、まずい事を口走ってしまった!!

 そして、思わず、左手の指輪に目を向けた。

 まず、間違いなく、今回の失態はだ。

 本格的に、呑まれたな…………。

 その証拠に、未だ俺は

 女の姿のままだ。

「ほんと、どうしよう…………」

 俺は悩みに悩んだ結果--------

「寝よ…………」

 とりあえず、寝た。

 そのまま、ベットにダイブ!!

 もう寝る…………。


 この後、俺はこの選択をした自分を殴りたいくらいに後悔した。


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 次の日--------

 一美は合法的に作った合鍵を使って、愛しい彼の部屋へと踏み入った。

 もちろん、彼にうんと甘える為だ。

 だから、今日はこっそり中に入って、添い寝でも……………。

 そう思って、寝室の扉を開けて--------固まった。

 思わず、目をパチクリして、目を擦ったが、視界に映ったものが変わるわけはない。

「…………何で……?」

 私の視界に映ったもの…………それは、見覚えのある女性だった。

 それもつい最近…………というより、昨日会ったばかりの人物。

「キリエさん……?」

 そう、昨日聖戦でフレンド登録したばかりの現聖戦の超有名人。

 キリエが戦闘服姿のまま、彼のベットの上で突っ伏して眠っていた。

 何で、キリエさんがここに……?

 驚きのあまり呆然としていると、急にキリエの姿が淡い光を放ち、彼へと変貌していった。

「うそ…………」

 私は驚きのあまり、両の手で口を覆い、呆然とその光景を眺めた。

 光が止むと、完全に彼の姿に戻った。

 そして、彼の体の上に見覚えのある少女の姿が--------

『あなたのために頑張ったんだから、休ませてあげてね』

 優しく微笑む彼女は見間違えではない。

 あれは参加者に神器を与える"女神"と名乗る少女そのものだ。

 何で、あの少女が彼の所に……?

 いや、それよりも、彼がキリエ……?!

 何だか、頭が混乱して来た。

「うぅん…………」

「っ!?」

「……………………」

 
 突然、彼がむくっと起き上がると、目を擦りながら一通り周りを見渡して…………私と目があった。
 
 しばらく、彼と目が合ったまま、お互いを見つめ合っていると…………。

「ああっ! カズミンだ!?」

「……………………へ?」

 何故か、彼は幼児退行していた。

「おはよう!」

 そして、そのまま私に抱き付くと、私の頬にキスをして----------------私は羞恥に耐えきれず、思いっきり彼の顔面を殴り飛ばした。

「ふにゅぅ…………」

 殴られた彼はそのままベットに背後から倒れて、気を失ったようだ。

「一体…………何が起こったというの……?」

 ちょっと、やり過ぎちゃったかな……?

 とは思いつつ、これは彼から聞き出す必要がある。

 そう思った私はふとある事を思い出して、行動に移す。

 一応、不本意ながら、鼻血を垂れ流して気絶している彼の治療も含めて…………。
 

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