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第一章 キリエ争奪戦

悲劇を糧に

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「第八師団--------全滅との報告です」

「…………そうか…………」

 森林エリアの中腹に、狂人テロ集団『マホロバ』のメンバーが集結していた。


 そして、最後に合流したチームが、数分前に目撃した出来事を事細かにメンバー達に報告していく。

 それを聞き終えると--------


 怒りのあまり、何本も木々を己が拳で殴り付け、圧し折る者。

 あまりにも凄惨な内容に涙し、膝を突きながら悲しむ者。

 飄々ひょうひょうとしてはいるが、腹わたが煮えくり返って、今にでも仇を討ちに行きたい者。

 皆、様々な態度を取っているが…………。


 ただ一人…………冷静に状況を理解し、考え込む者がいた。

 彼の名はゴルザ。

 宗教クラン『マホロバ』第二席にして、今聖戦の総指揮を務めていた。

 今聖戦に置いては、キリエと名乗る咎人の処罰に、第4~8席といった最上位のメンバーも同行していた。

 それは、キリエの神器や能力が何なのか情報が少ない上、素性が全く持って分からなかったからだ。

 広範囲の炎系魔法と推測される以外、ろくな情報がない。

 今回も炎系の魔法で同胞が一掃された、との報告も入っている。

 ほぼ間違いなく、炎系統の神器で断定しても良い、とゴルザは考えている。

 だが、戦場では不足の事態は付き物。

 例え炎系の魔法を使ったとしても、あくまで推測の内に押し留めておくべきだ。

 なら、同胞に報いる為にやるべき事は…………。

「皆に指示を伝えろ。粛清の儀を少し早める」

「御意に…………」

 報告していた者は素早く動くと、周りの者達へ対して、的確に指示を飛ばしていった。

「…………いつの世も、上手くいかぬものよな…………」

 ゴルザは憂い顔でその様子を眺めて--------ふと、ある事を思い出した。

 そういえば、前にも同じような事があったな、と…………。
 
 
 
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