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第一章 キリエ争奪戦
不自然
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キリエが入った洞窟の入り口付近の茂みの中--------
そこには、見覚えのある黒服の集団がいた。
宗教クラン『マホロバ』の構成員だ。
「仕留めました」
その内の一人--------腰を低くして、弓を構えている男が周りにいるメンバーにそう告げた。
「よくやった」
「いい気味だぜ」
「全くだ」
周りにいたメンバーは言い方は違くとも、キリエを仕留めた男を称賛した。
だが、ただ一人--------
「……………………」
不服なのか、他の者達とは違い、喜ぶ素振りを見せず--------それどころか、訝しげに洞窟の入り口で、横たわるキリエの遺体に目を向けていた。
「ミリア卿。如何なされましたか……?」
弓を構えていた男がミリアと呼ばれた女の様子に気づき、問いかけた。
ミリアと呼ばれる女は、しばらく、無言で佇んでいたが、ふと、弓を構えた男に向き直ると--------
「本当に仕留めたのか……?」
と、逆に問い返して来た。
自然と周りの者達の視線がミリアに集まる。
男は、確実に仕留めました。
そう断言したが、納得がいかないのか、疑いの眼差しでキリエの遺体を睨み付ける。
そして、手を顎に当て、何やら考え出すと--------
「…………可笑しい…………」
そう呟いた。
「何が可笑しいのでしょうか?」
「分からぬか……?」
周りの者達はミリアが何を言っているのか理解出来ずにいると、ミリアは呆れたように、現在の状況を端的に語り出した。
我らが同胞を悉く退けた咎人にしては、仕留めるのが簡単過ぎる、と…………。
マホロバは上位ランカーの殆どが所属する集団だ。
それは即ち、神器も、所属するメンバーの能力もどの国にも引けを取らないトップクラスの戦闘員である事を意味する。
当然、その中には国を丸々消し飛ばせる者もいるし、一人で何億ともなる騎士を屠れる者もいる。
数時間前にキリエに倒された中にも、そういったメンバーがいた。
だからこそ、ミリアは、咎人であるキリエは警戒して、ある予測を立てた。
キリエは間違いなく、聖域に入る前から対人戦の経験があり、神器のみならず、実力も相当なものではないか、と…………。
だが、蓋を開ければ、今まで倒された同胞達よりも実力の低いメンバーに呆気なく殺された。
あまりにも不自然過ぎる終わり方…………。
何か裏があるのでは、そう思った。
「考え過ぎでは……?」
「そうですよ。ミリア様はほんとに心配性なんですから…………」
「ですです!」
「……………………」
本当にそうなのか……?
正直、納得はいかない。
だが、まだ聖域を汚す輩はまだまだいる。
なら、一度この考えは保留とし、他の同胞と合流すべきだ。
そう自分に言い聞かせ、振り返った瞬間--------急に視界が反転した。
何が起きたのか理解出来ずにいると、首から上が無くなった自分の胴体が視界に入り、私の意識は、そのまま闇の中へと引きずり込まれた。
そこには、見覚えのある黒服の集団がいた。
宗教クラン『マホロバ』の構成員だ。
「仕留めました」
その内の一人--------腰を低くして、弓を構えている男が周りにいるメンバーにそう告げた。
「よくやった」
「いい気味だぜ」
「全くだ」
周りにいたメンバーは言い方は違くとも、キリエを仕留めた男を称賛した。
だが、ただ一人--------
「……………………」
不服なのか、他の者達とは違い、喜ぶ素振りを見せず--------それどころか、訝しげに洞窟の入り口で、横たわるキリエの遺体に目を向けていた。
「ミリア卿。如何なされましたか……?」
弓を構えていた男がミリアと呼ばれた女の様子に気づき、問いかけた。
ミリアと呼ばれる女は、しばらく、無言で佇んでいたが、ふと、弓を構えた男に向き直ると--------
「本当に仕留めたのか……?」
と、逆に問い返して来た。
自然と周りの者達の視線がミリアに集まる。
男は、確実に仕留めました。
そう断言したが、納得がいかないのか、疑いの眼差しでキリエの遺体を睨み付ける。
そして、手を顎に当て、何やら考え出すと--------
「…………可笑しい…………」
そう呟いた。
「何が可笑しいのでしょうか?」
「分からぬか……?」
周りの者達はミリアが何を言っているのか理解出来ずにいると、ミリアは呆れたように、現在の状況を端的に語り出した。
我らが同胞を悉く退けた咎人にしては、仕留めるのが簡単過ぎる、と…………。
マホロバは上位ランカーの殆どが所属する集団だ。
それは即ち、神器も、所属するメンバーの能力もどの国にも引けを取らないトップクラスの戦闘員である事を意味する。
当然、その中には国を丸々消し飛ばせる者もいるし、一人で何億ともなる騎士を屠れる者もいる。
数時間前にキリエに倒された中にも、そういったメンバーがいた。
だからこそ、ミリアは、咎人であるキリエは警戒して、ある予測を立てた。
キリエは間違いなく、聖域に入る前から対人戦の経験があり、神器のみならず、実力も相当なものではないか、と…………。
だが、蓋を開ければ、今まで倒された同胞達よりも実力の低いメンバーに呆気なく殺された。
あまりにも不自然過ぎる終わり方…………。
何か裏があるのでは、そう思った。
「考え過ぎでは……?」
「そうですよ。ミリア様はほんとに心配性なんですから…………」
「ですです!」
「……………………」
本当にそうなのか……?
正直、納得はいかない。
だが、まだ聖域を汚す輩はまだまだいる。
なら、一度この考えは保留とし、他の同胞と合流すべきだ。
そう自分に言い聞かせ、振り返った瞬間--------急に視界が反転した。
何が起きたのか理解出来ずにいると、首から上が無くなった自分の胴体が視界に入り、私の意識は、そのまま闇の中へと引きずり込まれた。
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